今回から、「リーシングマネジメント(入居者募集方法)」に基づいた具体的なリーシング活動の進め方について解説します。最初のステップとなる「幅広い募集のかけ方」について見ていきましょう。

多くの賃貸仲介会社から紹介してもらう仕組みを作る

リーシング戦略を策定したら実際にリーシング活動に入ります。リーシング活動は大きく3つのステップからなります。

 

[ステップ1]幅広く募集をかける
   ↓
[ステップ2]賃貸仲介会社の営業マンに推薦してもらう
   ↓
[ステップ3]入居希望者に住みたいと思われる部屋を作る

 

これは、一般的に家電等の物(商品)を売る流れとまったく同じものです。では1つずつ見ていきましょう。

 

【ステップ1】幅広く募集をかける

最初のステップはまず、できるだけ多くの入居希望者の目に留まるようにすることです。例えば、家電商品を売るに当たっては、まず1つでも多くの小売店舗にその商品を置くことが大切になります。ヤマダ電機だけではなく、ビックカメラにもヨドバシカメラにも商品を置いてもらうということです。1店舗よりは10店舗、10店舗よりは100店舗といった具合です。

 

仲介会社もかなりの数があります。例えば大宮エリアにあるアパートに客付けをしてくれる会社で言えば、1000社以上が対象となります。その対象となる仲介会社すべてに管理物件の空室を扱ってもらう活動が必要になります。

 

では、どのような方法で幅広く募集をかけるのかを説明します(図表1)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賃貸仲介会社への空室募集の依頼は、基本的には4つの方法で行います。その4つとは、メール(FAX)DM、電話、訪問、レインズ・自社ホームページです。

 

①メール(FAX)DM
まず、マイソク(賃貸募集チラシ)を作成し、対象エリアの賃貸仲介会社へ一斉にメールもしくはFAXを送ります。物件によって異なりますが、基本的には1~2週間に1度という形で繰り返し送ります。どの範囲まで送るかは、その物件特性や地域特性を考慮し、入居者を募集できる最大の範囲を見定めます。

 

狭すぎては効果が少なくなりますし、広すぎては余分なコストがかかってしまいます。物件の特性に合わせてエリアを選定します。特に近隣のみだけでなく、最寄りのターミナル駅や沿線の都心部ターミナル駅も重要なポイントです。

 

当社の事例では、例えば、宇都宮線の東大宮という駅に物件があれば、最寄りのターミナルである大宮駅からの客付けが中心になりますので、大宮駅周辺の仲介会社に力を入れて営業します。東武東上線の志木駅にある物件であれば、志木駅周辺の仲介会社はもちろん、沿線ターミナルの池袋にも募集をかけます。実際、志木の物件では地元志木駅周辺の仲介会社からの客付けよりも池袋からの客付けのほうが圧倒的に多いのが実情です。

 

このメール(FAX)DMは非常に効果が高いものです。一度も訪問していない、面識のない仲介会社から入居申し込みが入ることも頻繁にあります。また、メール(FAX)DMを送っておくことで、実際に訪問したときに認知されていて相乗効果が高まります。

 

②電話
次に、過去に取引実績のある営業マンを中心に、電話で募集依頼をかけます。「今度当社の管理物件の○○マンションの103号室が空室になったので、お客様のご紹介をお願いいたします」といった内容です。

 

当社の場合で言えば、リーシングマネジメントの担当者が、賃貸仲介会社の営業マンと密接な関係にある場合が多いので、その営業マンに電話(主に携帯)でお知らせするケースが多いです。その他の取引実績のない会社に対しては、一律にテレアポを行います。

朝礼で時間をもらって物件PRのプレゼンを

③訪問
そして、賃貸仲介会社への直接訪問ですが、この直接訪問は、時間と労力はかかりますが、最も効果的な手法です。逆に、直接訪問しないで高入居率を維持していくのはまず無理と言ってもよいでしょう。当社では、リーシングマネジメントの担当者が、対象物件のあるエリアおよび沿線ターミナル駅周辺の賃貸仲介会社を、1日平均約50社訪問し、徹底的に入居者募集の依頼を行います。

 

訪問に関しては、対象となるすべての会社を訪問します。まずは、有力な会社から優先順位を付けて、先述の取引実績のある会社を中心に訪問します。空室の状況によっては、毎週定期的に訪問します。ポイントは、空室が埋まるまで徹底的に訪問して周知徹底するというところです。

 

人間は、顔を見ているのとそうでないのとでは対応に差が出てくるので、特に入居者の入りづらい物件であればあるほど、この訪問活動を重点的に行わねばなりません。また入居希望者の紹介依頼とともに、この訪問時に徹底したヒアリングを行います。その内容は、なぜこの部屋は空室が埋まらないのか、どうやったら入居者がつくのかというものです。家賃が高いのか、設備が不足しているのか、実際に案内をしている現場の営業マンの意見は非常に重要であり、彼らの意見を複数吸い上げて分析し、次の手を打ちます。

 

新規で訪問する場合には、訪問時に担当者が不在であれば名刺と募集図面・賃貸募集チラシ(マイソク)を必ず置いてきます。すると帰社後、面識はなくても約半分の営業マンから連絡が入りますので、電話で同じように募集依頼と意見の吸い上げを行います。

 

ヒアリングで得た情報から必要であればオーナーさんにご報告をし、家賃を下げてもらうことや、設備を追加してもらう等の対策をすぐに取ります。1日部屋を空けておくことはオーナーさんにとって1日分の賃料を捨てていることと同じです。何事もすぐに行うことが重要です。

 

また、訪問するに当たって、賃貸仲介会社の朝礼(夕礼)に参加させてもらうことは非常に有効であると言えるでしょう。個別の訪問では、賃貸仲介会社の営業マン全員に物件の情報をお知らせできるわけではありません。対面しない営業マンへの告知はできませんので自ずと限界があります。

 

しかし朝礼の場に居合わせれば、その会社の営業マンが全員参加していますので、営業マン全員に告知できるというメリットがあります。朝礼では、時間を10分程度もらって物件のPRのためのプレゼンをさせてもらいます。当社でも、空室が長引いている物件や空室が多い物件を一気に埋めたい場合などは、積極的に賃貸仲介会社の朝礼に参加させていただいています。

 

当然、訪問先店舗の店長さんの了解を得て行うわけですが、店長さんとしても、物件の説明を直接オーナー(または代理)から聞くことができ、自社店舗の仲介売上につながる可能性が生まれるので、基本的には喜んで受け入れてくれます。過去、この朝礼訪問を行って、空き物件を満室にしてきた実績は数限りなく存在していますので、最も有効な募集方法と言っても過言ではないでしょう。

 

④レインズ・自社ホームページ
4つ目はレインズを活用した募集方法です。レインズとは不動産会社だけが閲覧できる不動産の「市場」のようなもの(ネットワーク)で、売り物件や賃貸物件が登録されています。

 

当社はここに空室をすべて登録するようにしています。賃貸仲介会社の中にはこのレインズを見て入居希望者に紹介している会社も多く存在するのです。そして、日々レインズを更新することで、自社管理物件の空室が上位に表示されるような工夫も必要になります。

 

また、当社では、仲介会社向けのホームページ(HP)を開設しており(http://musashi-chintai.com/)、レインズに連動して空室情報を載せています。ここでは写真等レインズには載せきれない情報をアップしており、仲介の営業マンに対してわかりやすい情報提供を行っています。

 

さらに、入居申込書、保証会社審査申込用紙、賃貸借契約書、重要事項説明書等をすべてPDFで載せており、仲介の営業マンがこのHPから自動的に契約まで進められる体制を構築しています。営業マンは基本的に忙しいので手間をかけたくないという要望があり、その要望に応えることで入居希望者を紹介してもらいやすくしているのです。それと同時に仲介の営業マンが自動的に申し込みを入れられる体制を作っています。

 

何度も繰り返しますが、このように入居者の募集に当たっては、依頼方法を問わず、間口を広げ、多くの賃貸仲介会社から入居希望者を紹介してもらう仕組みを作ることがとても重要です。

 

このようにメール(FAX)DM、電話、訪問、レインズの更新を物件の状況に応じて繰り返し、繰り返し行うということが、地道ですが確実に入居につながる唯一の方法です。このような形で対象となる賃貸仲介会社の店頭に管理物件の空室を並べてもらいます。

本連載は、2013年7月2日刊行の書籍『改訂版 空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資・経営(管理運営)の成功を保証するものではなく、本連載を参考にしたアパート事業は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本連載の内容に基づいて経営した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。なお、本連載に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

空室率40%時代を生き抜く!  「利益最大化」を実現する アパート経営の方程式

空室率40%時代を生き抜く! 「利益最大化」を実現する アパート経営の方程式

大谷 義武 太田 大作

幻冬舎メディアコンサルティング

アパート経営は今までと同じやり方では利益が出ない時代へと状況が大きく変わってきています。歴史上初めての大きな転換期を迎えていると言っても過言ではありません。だからこそ今のうちに、アパート経営を見直し、しっかりと…

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