前回は、アパートオーナーが知っておくべき二つの法律について説明しました。今回は、アパートオーナーにとって深刻な問題である家賃滞納がテーマです。回収率を上げるための手法等を見ていきましょう。

回収リスクを考えれば保証会社の利用は必須

滞納は非常に深刻な問題です。滞納は家賃だけではありません。更新料と、退去時の入居者負担金(退去負担金)などまで含まれます。また、現在の法律によって簡単に出て行ってもらえないことも連載の第10回で説明いたしました。

 

オーナーさんが実際に得られる収入は、「契約賃料等×回収率」です。回収できなければいくら満室になっても収入が得られないということになります。入居率と並んで、もしくはそれ以上に回収率が重要になってきますし、今後はその重要度が上がっていくことは間違いありません。

 

滞納が一度起きてしまうと、回収するのは非常に困難です。いかに滞納させない仕組みを作るかということが、これからのアパート経営においては重要になります。

 

当社はそのために提携する保証会社への加入を絶対条件としています。保証会社への加入によって滞納のリスクはほぼ防げると言えますので、非常に重要な要素となります。もちろん、以前存在したリプラスという会社のように、保証会社自体が倒産するというリスクもあります。しかし、倒産リスクよりも滞納が発生するリスクのほうが圧倒的に高いのが現状です。

 

 

要は、入居者が保証会社に保証料を支払うことによって、滞納のリスクを保証会社に負担してもらうということです。家賃を回収できなければオーナーさんは倒産してしまうわけですから、これはオーナーさん自身の自衛手段とも言えるでしょう。そこで当社の管理物件においては、基本的に新規の入居者はすべて保証会社に加入しています。

 

保証会社に加入するための保証料は、家賃の30~50%程度です。これを入居者に支払ってもらいます。また、更新時に一定額を支払ってもらうことで、滞納が発生した場合の家賃等を保証会社が入居者に代わって負担するというのが主な仕組みです。

 

なお、中古物件をオーナーチェンジで購入すると、保証会社に加入していない状況がほとんどですが、このような場合でも既存の入居者に保証会社に加入させることは可能です。費用は入居者ではなくオーナーさんの負担となるケースが一般的ですが、費用負担をしてでも保証会社に加入するほうが望ましいでしょう(ただし、既存入居者を保証会社に加入させるのは、入居者の同意を得なければなりません。当社の事例では、50%程度の加入成功率となっています)。

 

また保証の範囲としては、家賃だけでなく、更新料・退去負担金、さらには電気・水道の料金までもカバーできるようになっています。オーナーさんにとっての回収リスクを考えれば、保証会社に入るのは必須と言えます。

家賃回収専門の弁護士事務所に委託する手も

滞納を防ぐためには保証会社への加入が必須であるとはいえ、中古物件を取得した場合には、既存の入居者が保証会社に加入していないケースがほとんどではないでしょうか。

 

前項で説明した通り、既存の入居者に対しては保証会社への加入を促すものの、すべての入居者を加入させられるわけではありません。そして保証会社に加入していない入居者が滞納をするケースも多々あります。その場合には、オーナーさん自ら滞納家賃を回収しなければなりません。ポイントは滞納が始まったらすぐに督促の電話、書面の送付を行うことです。月末に入金がなかったら月初の早い段階で督促をすることによって大きな滞納になることを防ぎます。

 

しかし、それでも払わない入居者に対しては、現地への訪問も行います。これは実際に家に来られるのは嫌だという心理的プレッシャーをかけることで回収を図ります。と同時に、連帯保証人がいる場合には連帯保証人に対しても電話、書面による督促を行います。場合によっては内容証明を送ることもあります。人間にはやはり人に迷惑をかけるのは嫌だという本能がありますので、この段階で支払う入居者がほとんどです。

 

ただ、それでも連絡が取れなかったり、連絡を無視したりする入居者からは、回収が非常に難しくなります。滞納額は平気で3カ月分、4カ月分と膨らんでいきます。その際は、家賃回収専門の弁護士事務所に委託する方法があります。現在ではこの分野に特化した弁護士事務所も出てきており、当社ではいくつかの弁護士事務所と提携して家賃の回収を委託しています。委託するに当たっての費用は成功報酬として回収額の30%前後となるのが一般的です。全額回収できないことを考えれば、オーナーさんにとっては良い方法と言えるでしょう。

本連載は、2013年7月2日刊行の書籍『改訂版 空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資・経営(管理運営)の成功を保証するものではなく、本連載を参考にしたアパート事業は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本連載の内容に基づいて経営した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。なお、本連載に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

空室率40%時代を生き抜く!  「利益最大化」を実現する アパート経営の方程式

空室率40%時代を生き抜く! 「利益最大化」を実現する アパート経営の方程式

大谷 義武 太田 大作

幻冬舎メディアコンサルティング

アパート経営は今までと同じやり方では利益が出ない時代へと状況が大きく変わってきています。歴史上初めての大きな転換期を迎えていると言っても過言ではありません。だからこそ今のうちに、アパート経営を見直し、しっかりと…

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