周りにも悪い影響を与える「モンスター入居者」
前回まで滞納問題の深刻さと、いかに滞納を防ぐかについてご説明いたしました。しかし、オーナーさんを悩ませる不良入居者は滞納者だけではありません。
いわゆる「モンスター入居者」と言われる不良入居者です。騒音を出したり、ゴミ屋敷にしたりというとんでもない入居者です。滞納が定量的な面だとすれば、不良入居者は定性的な面の問題です。そして単純なお金の問題ではないだけに余計に厄介です。
しかし、これらの入居者を放置していると、例えばゴミ屋敷による異臭が充満することで他の入居者にもその影響が及び、最悪の場合は周りがみんな退去してしまいます。滞納は、その入居者だけの問題ですが、このモンスター入居者は、周りにも悪い影響を与えるという点では、滞納よりも深刻な問題です。これらの「モンスター入居者」には毅然として対応する必要があります。一日も早く退去してもらわなければオーナーさんの利益は確保できません。
「法的措置」か「任意の話し合い」で退去させる
では、不良入居者の追い出しはどうすればいいのでしょうか。まず、不良入居者には大きく二種類のパターンがあることをご説明しました。「滞納者」と「モンスター入居者」です。
滞納者については、保証会社に入っている場合は保証会社が対応しますので、ここでは保証会社に入っていない滞納者への対応です。前々項で法律事務所を使っての回収方法をご紹介しました。しかし、この方法でも回収できない場合があります。その場合は、追い出すしか手はありません。その追い出しの手法には「法的措置」と「任意の話し合い」という二種類があります。
一つめの「法的措置」は、家賃の不払いや他に迷惑をかけることを理由に裁判所に申し立て、立ち退きの判決をもらう方法です。
これは、時間と弁護士費用(100万円前後)がかかります。また、不払いが1、2カ月分では裁判所も認めてくれないため、3カ月分以上の滞納に対して申し立てる必要があり、判決が出るのに数カ月かかります。判決が下れば強制執行となりますが、未収分の家賃は基本的に回収することはできません。基本的にはあきらめるしかないのが実情です。また現実的には、ゴミ屋敷のゴミも入居者に撤去させることはできないでしょう。
二つめは「任意の話し合い」による退去です。話し合いを行って、出て行ってもらうというものです。通常は、オーナーさんもしくは管理会社が行うことになります。この場合は、話し合いで解決できれば、法的措置に比べれば時間が短縮できる(最短1カ月未満)というメリットがあります。
ただし、法的措置と同様に未収分の家賃を回収することはまず不可能です。下手をすれば引っ越し代などの名目で退去してもらうため、入居者にお金を払わなければいけないケースも多くあります。まさに「盗人に追銭」です。オーナーさんにとっては「踏んだり蹴ったり」です。しかし、根本的にわが国には、先述した通り借地借家法の存在がありますので、致し方ない部分がどうしてもあるのです。
そして、法的措置にしろ、任意の話し合いにしろ、オーナーさんにとっては別途、対象部屋の原状回復費用がかかります。さらに、空室期間の機会損失が発生し、新規入居者獲得のための広告料もかかります。
不良入居者を入れてしまうということは、オーナーさんにとっては非常に大きなマイナスになることをご理解いただければと思います。