アパート経営にあたっては、賃貸借に関する法律を知っておくことが必要です。今回は、その中でも特に理解すべき2つの法律、「借地借家法」と「消費者契約法」について見ていきます。

アパート経営者にとって非常に不利な二つの法律

現在、わが国におけるアパート経営を取り巻く環境は大きく変化しています。今後のアパート経営の肝は、その厳しい社会の「流れ」の中でどのように家賃を回収していくかにあります。そのためには、まずその「流れ」を作っている原因を理解しなければなりません。

 

日本の賃貸借の取り決めは、民法と民法の特別法である借地借家法、さらには平成13年施行の消費者契約法という法律に則っています。そして、民法を除くこの二つの法律が、オーナーさんにとって非常に不利な法律であるということをきちんと理解し、対応することが、アパート経営におけるリスク管理につながるのです。

 

入居者とは「対等な関係ではない」という前提を持つ

では、まず借地借家法から見ていきましょう。

 

これは一言で言えば、「借家権」という形で賃借人(入居者)に強い権利を認めている根拠となる法律と言えます。

 

空室で家賃を得られないのはある意味当たり前というか、仕方がないと割り切れますが、入居者がいるのに家賃を得られないというのは非常に困った問題です。そして、そんな家賃不払いの入居者が、何カ月も家賃を支払わないまま住み続けることができてしまうところに問題があるのですが、その根本原因はこの借地借家法にあります。

 

法律の詳細は他書に譲りますが、借地借家法のルーツは戦時立法にあります。戦争中、夫が戦地に赴き、妻や子供だけになってしまった家庭が家主から追い出しを受けないようにと、入居者の権利を強く保護するために作った(厳密には、昭和16年の改正により「正当事由」が導入された)という背景があるのです。そのため、貸主と借主との関係が対等ではなく、明確に借主優位(借主保護)の内容となりました。

 

例えば、家賃1、2カ月分の滞納では退去させられないという判例があります。また、契約の終了に当たっては、借主側が住み続けることを選択すれば、貸主側からは自分がその物件に住まざるを得ないなどの「正当事由」がある場合を除き、契約を終了する(出ていってもらう)ことはできません。

 

つまり、オーナーさんは、「入居者に簡単に出ていってもらうことはできない」という認識を強く持ちながら、アパート経営に取り組む必要があるのです。

 

また、話題になった更新料訴訟の発端になったのが消費者契約法という法律です。特にこの法律の第10条が問題で、「消費者の利益を一方的に阻害する取り決めは無効」という内容になっています。この条文を根拠に、更新料は賃貸借契約書に明記してあっても「無効」とされる判決が相次ぎ賃貸業界を震撼させました。

 

これは、結果的には「更新料は有効」という判決に落ち着いたので、全国のオーナーさんは胸をなでおろしたに違いありません。

 

大切なことは、車と歩行者の関係で言えば、オーナーさんは車で入居者は歩行者であるという認識を持つことです。そもそも対等ではないという前提で契約関係を組み立てないと、突然大変なことに巻き込まれてしまう可能性が高くなります。この二つの法律の意味をよく理解することは、アパート経営を行う上で非常に重要です。

本連載は、2013年7月2日刊行の書籍『改訂版 空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資・経営(管理運営)の成功を保証するものではなく、本連載を参考にしたアパート事業は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本連載の内容に基づいて経営した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。なお、本連載に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

空室率40%時代を生き抜く!  「利益最大化」を実現する アパート経営の方程式

空室率40%時代を生き抜く! 「利益最大化」を実現する アパート経営の方程式

大谷 義武 太田 大作

幻冬舎メディアコンサルティング

アパート経営は今までと同じやり方では利益が出ない時代へと状況が大きく変わってきています。歴史上初めての大きな転換期を迎えていると言っても過言ではありません。だからこそ今のうちに、アパート経営を見直し、しっかりと…

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