1日でも早く空室を埋める戦略を練る
賃貸アパートに関しては、一定の割合で必ず空室が発生します。最近でこそ持ち家でなく賃貸住宅を終の住処とする人も出てきましたが、賃貸アパートは、基本的には仮の住まいという性格を有しています。転勤や結婚、入学等ライフサイクルによって退去が発生するものなのです。
退去があれば、すぐに次の入居者の募集に取り掛かる必要があります。空室というのは1円も生み出さない空気を部屋に住まわせているのと同じことですから、1日でも早く空室を埋めることが重要となります。
入居者募集は、リーシング戦略を策定することからスタートすることになります(図表1)。
具体的には、「いつまでに」「いくらの賃料で」「敷金と礼金はどの程度で」「どのようなリフォーム(改修工事)をかけて募集するか」という入居者募集の方針です。さらには、エリアの特性を分析し、ターゲットをどこに絞るのかを検討する必要があります。
たとえば、当社の管理しているエリアで西川口というエリアがあります。このエリアは外国人が多いエリアなのですが、ターゲットにその層を取り込むのかどうかということまで戦略を立てる上では必要になります。
この戦略策定に当たって重要なことは、賃貸仲介会社に徹底的にヒアリング(意見の吸い上げ)をかけることです。そして、その中でも多くの仲介をしている「できる営業マン」からの意見を尊重することが重要です。
賃料や敷金礼金等の条件は、その時々の経済情勢および一年のうちの時期(何月か)ということによっても大きく左右されます。1~3月のいわゆる繁忙期と6~7月の閑散期では、その条件は大きく変わります。また、1年前と同じ条件では入居者の募集が難しくなっているということは頻繁にあることです。
ですから、リーシング戦略の策定に当たっては、賃貸仲介会社への徹底的なヒアリングが重要になってくるのです。そこで複数の意見を吸い上げ、その内容を総合的に判断し募集条件を決定します。募集条件とは、市場に賃貸募集に出す条件であり、オーナーさんにとっては「最高」の条件です。
というのは、募集条件に対していわゆる指値等の交渉が入ることはありますが、募集条件より良い条件で入居者が入ることは基本的にはあり得ないからです。家賃7万円で募集すれば、2000円の値下げ交渉が入って6万8000円になってしまうことはありますが、7万2000円には決してなりません。
条件の策定に当たって注意すべき点は、1日でも早く埋まる、なおかつ1円でも高い家賃を見極めるということです。1日でも早く決めることと、1円でも高い家賃で決めることは基本的には矛盾しますが、そのバランスを見て、オーナーさんにとって最高の条件を探るのが利益を最大化するポイントであり、PM会社の腕の見せ所です。
募集賃料と成約賃料を使い分ける
前項で述べた募集条件が、「最高」の条件になるということはおわかりいただけたと思います。より具体的に言えば、賃料(だけではなく、敷金礼金等も含めてですが)には、募集賃料と成約賃料の2種類があるということです(図表2)。
たとえば、相場7万円の部屋を7万5000円で募集に出し、5000円の値引きにはあらかじめ応じる旨を賃貸仲介会社に告知しておくという方法があります。これは一般的に、昨今の入居希望者は募集賃料に対して指値(値引き交渉)をするケースが多いのを想定してのためです。
一方、初めから値引きを受け付けないという前提で、7万円で募集に出す方法もあります。この2つの例を見比べてみますと、1つめのケースのメリットは7万円以上で入居が決まる可能性があるということです。デメリットは、7万円以下で探しているような人からは初めから除外されてしまうため、対象が少なくなってしまうということです。
2つめのケースでは、7万円という条件で探している人に対して訴求できるので、より多くの人がこの部屋の募集を見る可能性があるというメリットがあります。一方、7万円以上で成約できる可能性はなくなってしまうのがデメリットです。
リーシングに当たっては、募集賃料(募集条件)と成約賃料(成約条件)という2つの賃料(条件)が存在するということを理解した上で、その2つをどのように使い分けるかという戦略を持って、リーシングを行う必要があります。当社では、あらかじめ成約賃料(条件)を想定し、その成約賃料(条件)に落ち着かせるためにはどうすればいいかという視点に立ち、2つの賃料(条件)を使い分けるようにしています。