節税に役立つ、出張旅費規程の作成や会議費の損金計上
各種の費用を見直すことで、キャッシュを使わずに効果的な節税が可能です。費用の見直しにはさまざまな方法がありますが、本連載では「出張旅費規程の作成」「交際費の一部を会議費として計上」「短期前払費用の計上」「役員賞与の事前確定届出給与」について紹介します。
●出張旅費規程の作成
宿泊を伴う出張が多い会社の場合、「出張旅費規程」を整備することで節税が可能です。一般的に出張にかかる諸経費としては「交通費」「宿泊費」「日当(食事代)」などが挙げられます。
こうした諸経費の社内規定を整備して「出張旅費規程」を作成し、そのうえで出張旅費規程に基づいて「出張手当」を支給すれば、会社の業務上必要な経費として全額を損金化することができます。
さらに、出張手当は消費税の対象にはなりませんので、法人税等のほか消費税の節税にもなります。
●交際費の一部を「会議費」として計上
現行の税制では、資本金1億円以下の中小法人(大企業の子会社を除く)であれば、年間800万円までを「交際費」として全額を損金計上できることになっています。交際費とは、得意先や仕入先など外部の事業関係者への接待、慰安、贈答のために使った費用のことです。
年間800万円ということは1カ月につき70万円弱、会社によっては年間800万円を軽くオーバーしてしまうはずです。
その場合、「会議費」の定義をうまく利用することで節税効果を高められます。会議費とは、社内での会議や取引先との打ち合わせのために使った費用を指します。
具体的には、会議の際に提供するドリンクや食事代です。これら社内外の会議および打ち合わせが「実態を備えた会議」として認められれば、1人につき5000円までは交際費の金額に含めなくてもよしとされているのです。
たとえば、取引先の担当者5人と自社のスタッフ3人で仕事の打ち合わせを兼ねて食事をした場合、8人×5000円=4万円については「交際費」ではなく「会議費」として計上が可能です。
会議費として計上するためのポイントは、その打ち合わせを兼ねた食事が「実態を備えた会議」として認められるか否かです。会議の議事録や領収書のほか、経費支出明細で取引先企業名や参加者の人数、氏名などを記録として残しておくことで会議費の根拠となります。
ただし、会議費として損金計上するため無理に食事などの機会を増やすのは、キャッシュの無駄遣いであり節税の正しい方法ではありません。あくまでも事業や取引をスムーズに運ぶために不可欠な打ち合わせをした際、従来は交際費として一括計上していた一部を会議費として切り出すことで、効果的な節税ができるということです。
決算間際の節税なら「短期前払費用」の計上を
●短期前払費用の計上
決算間際でも駆け込みで利用できる節税の方法です。節税は長期計画的に行うのが大前提ですが、どうしても決算間際で節税したい場合の対策と捉えてください。
「短期前払費用」とは、相手との契約で継続的に受けているサービスについて、向こう1年間の代金を年払いで支払うことです。事務所の家賃や保険料などを1年分前払いするようなイメージです。
ポイントは3つで、1つ目はこれから受けるサービスの代金が前払いする「前払費用」に該当していること、2つ目は一定の継続的な役務(サービス)提供契約が締結されているものが対象となることです。前述のように事務所の家賃や保険料などは対象となりますが、外注費や加工費などは対象となりません。
3つ目は、年払い契約にすることです。事務所の家賃は月払いが多いですが、決算までに年払い契約に書き換えて、かつ決算までに1年分の支払いを完了させておく必要があります。この方法は、節税効果を前倒しにしているだけなので長い目で見れば節税にはなりません。繰り返しますが、予想以上に利益が出た年度の限定的な節税法として利用を検討してください。
1年分をまとめて支払う必要があることから、その分キャッシュが必要になると考えられますが、月払いか年払いかの違いだけで、実際には支払う額が増えるわけではありません。仮に一度にまとめて支払うのが厳しいのであれば、短期前払費用は手形や小切手による支払いも認められていますので、必要に応じて相手方と交渉するといいでしょう。