建物附属設備の「耐用年数の短さ」に注目
本連載では、BSをスリム化する〝持たざる経営〞を推奨しています。しかし、業種によっては工場や本社ビルを所有したほうがいいケースもあるなど、事業上不可欠な投資を積極的にすべき機会はあるものです。その場合の効果的な節税方法を紹介します。
●建物本体と建物付帯設備を分けて計上する
たとえば新築の本社ビルを建築する場合、「建物」については建築費を一括で処理するケースが多いはずです。しかし、この処理の方法では節税面で大きなマイナスとなります。建物の取得時には、新築でも中古でも「建物」と「建物附属設備」に分けて処理するのが鉄則だからです。
建物附属設備とは、建物本体と一体となって機能を発揮する付属設備のことです。具体的には電気設備、防災設備、給排水設備、衛生設備、ガス設備、エレベーター設備、自動ドア設備、冷暖房設備などです。
建物附属設備は、建物よりも耐用年数が大幅に短い点がポイントです。たとえば鉄筋鉄骨(RC)造の耐用年数は47年ですが、建物付帯設備は総じて8〜17年程度となっています。
一例を挙げると、防災設備は8年、冷暖房設備は13年、電気設備は15年、エレベーター設備は17年となっています。
これらを建物本体と分けて資産計上することで、建物附属設備の部分を早く償却できるのです。
中古ビル・マンションは耐用年数が終了していることも
建物と建物附属設備を分割計上するためには、建築費の内訳のどの部分が建物附属設備に分類されるのかを明確にしなければなりません。
新築の場合は建設会社などが建築費の見積書を持っていますから、その見積書などを参考に建物附属設備に該当する部分を抜き出せば問題ありません。
仮に見積書などの資料がない場合でも、専門業者を交えて合理的に見積もりを出すことができます。同じ規模・タイプのビルを建築する際はどのような建物附属設備が採用され、それらの見積もりの平均額はいくらかなどをもとに具体的に算出できるためです。
このように「合理的な見積もり」ができれば分割計上は可能です。
一方、問題は中古資産です。ビルやマンションの築年数によっては建物附属設備の耐用年数が終了しており、簿価がなくなっているケースがあるからです。この場合は建物附属設備を切り出した節税はできません。
仮に、建物附属設備の簿価が残っていたとしても、各設備を合理的に見積もるのが非常に難しいという問題があります。中古ビルやマンションを利用してこの手の節税を検討する場合、顧問税理士や建築会社などに相談することをおすすめします。