最高裁判例の射程と問題点
しかし、最高裁判決の論旨は、他の民放テレビ局との比較を念頭に置いている印象を強く受けます。これはやむを得ないことで、裁判所は司法府として、既存の法律の解釈適用が任務だからです。放送法が制定されたのは1950年であり、マスメディアといえば新聞、ラジオ、テレビくらいしかありませんでした。
問題は、当時の論理が現在でもあてはまるか、すなわち、受信料強制徴収制度の基礎となる、NHKの「公共放送」としての特殊な役割が求められているかということです。
NHKの存在意義はどう変わったか?
一つの考え方として、現在のように、テレビ以外にも多様な媒体・メディアがあり多チャンネル化・IT化が著しく進んだ時代においては、公共放送の役割は相対化・希薄化しているということも可能でしょう。
これに対し、逆の考え方も可能です。すなわち、今日では誰でも情報を発信・受信でき、しかも、大量の情報がやりとりされ、誤った情報も瞬時に広まるので、独立性・公正性の強い公共放送の役割が以前にもまして求められていると考えることもできます。
しかし、いずれにしても、現在、公共放送としてのNHKが存在している以上、NHKに求められるのは、強度の独立性・公正性です。その前提が失われてしまえば、NHKの存在意義はなく、強制徴収制度の正当性も認められないということです。
NHKの受信契約数が激減した背景には、NHKが、これまでクレームが多く評判が悪かった戸別訪問をやめ、契約書類を郵送するなどのソフトな営業活動に切り替えているということがあります。単純に「メディアが多様化して存在意義を感じない人が増えた」ということはできません。
世の中が凄まじい速度で移り変わっていくなかで、NHKが今後、公共放送としての存在意義を発揮していくのか、それとも、役割を終えていくのか、その過渡期を迎えているといえます。
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