(※画像はイメージです/PIXTA)

2022年11月8日、政府の税制調査会の専門家会合において、相続税と贈与税のあり方について、「資産移転の時期の選択により中立的な税制を構築していく必要がある」という見解をまとめました。これは、相続税と贈与税の一体化を志向するものといえます。政府税制調査会の提言の背景にどのような問題意識があるのかということと、今後の方向性について解説します。

政府税調は何を問題視しているのか?

政府税調の専門家会合において提示された「資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築に向けた論点整理」によると、現行の相続税・贈与税のあり方について問題視しているのは、以下の2点です。

 

1. 高齢世代から若年世代への資産の移転が阻害されている

2. ごく一部の富裕層が優遇されている

 

それぞれについて解説します。

 

◆問題点1. 高齢者世代から若年世代への資産の移転が阻害されている

第一の問題点は、高齢世代から若年世代への資産の移転が阻害されているということです。その主な原因は、相続税の税率よりも贈与税の税率が高いことにあります。

 

すなわち、まず、死後に相続税がかかる見込みのない人は、生前にまとまった資産を贈与すると贈与税がかかるので、贈与をためらう要因となります。

 

また、相続税がかかる人も、生前に贈与するよりも相続まで待った方が税率が低いので、贈与をためらう要因となるのです。

 

◆問題点2. ごく一部の富裕層が優遇されている

第二の問題点は、ごく一部の富裕層のみが優遇されているということです。

 

すなわち、生前贈与には以下のような非課税の制度があります。

 

・基礎控除(暦年贈与・1人あたり年110万円)

・教育資金贈与(1人あたり最大1,500万円)

・住宅資金贈与(1人あたり最大1,500万円)

・結婚・子育て資金贈与(1人あたり最大1,000万円)

・配偶者控除(最大2,000万円)

 

これらはいずれも非課税ですが、基礎控除(暦年贈与)を除くと金額が非常に大きくなっています。

 

また、「教育資金贈与」「住宅資金贈与」「結婚・子育て資金贈与」はいずれも租税特別措置法による特例であり、期限付きでありながらこれまでずっと更新されてきたものです。

 

富裕層であれば、これらを活用して財産を生前に分割して贈与することができ、無税か、あるいは相続税よりも低い税率で若年世代へ資産の移転が可能となるということです。

 

こういったことに鑑み、生前贈与でも相続でも、ニーズに即した資産移転が行われるように、資産移転の時期の選択により損得が生じないように税制を構築していく必要があると指摘しているのです。

 

なお、以上の問題意識の根幹は、与党(自民党・公明党)の税制調査会の「令和4年(2022年)度税制改正大綱」で示されていた問題意識とも通じます。

 

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