医院の雰囲気向上に役立つ「接遇セミナー」
接遇セミナーの受講後、明らかに医院の雰囲気が良くなりました。接遇セミナーを受けることになったきっかけの1つは、患者様から「態度がなっていない」「感じが悪い」などのクレームがあったことです。
歯科医院は治療さえ良ければいいというものではなく、人としての接し方やマナーの違いで患者様のリピート率は変わります。接遇セミナーは日々の表面的な問題を解決し、理屈として分かりやすくすぐに実践でき、かつすぐに効果が出ます。
私から講師に出しているリクエストの2022年のテーマは「スタッフが仲間割れをしないこと」なので、「ワンチーム」をテーマにしたセミナーを各医院で、診察時間内に開催してもらっています。
新規の患者様が医院に来たときの第一印象はとても大事です。医院に足を踏み入れた瞬間の空気感やスタッフの表情や雰囲気を、初めて来る患者様は敏感に感じ取っています。そこで入りやすい雰囲気の場づくりと次回からも安心して治療を受けてもらえる環境づくりに努めています。
私たちが良いと思っていることでも、接遇の先生から見ると間違っているところが多くあります。
例えばスタッフを名前で呼ぶ「○○ちゃん、お願い」というのは、スペシャリストらしさに欠けると注意されたのです。「○○さん、お願いします」と言ったほうが教育されている大人の雰囲気が出るため、トラブルを未然に防ぐことができるとアドバイスを受けました。
それぞれやっていることがバラバラだと教育されていない子どもたちのように見えることも教わったので、一つひとつの作法や患者様の呼び方にも統一感を出すように努めました。
ホテルに行くと言葉遣いなどの対応は統一されています。良いホテルであればあるほど、きちんと教育されている印象を受けます。それと同じだなと納得して、みんなで気を付けるようにしました。
また患者様へは一言、「本日担当する村瀬です。よろしくお願いいたします」というような自己紹介が大切だと教わりました。理由は、一言挨拶があれば円滑にいく作業も、その挨拶やアイコンタクトができていないと小さなトラブルを引き起こす可能性があるからです。歯科医院でよくあるトラブルとしては、紙を渡して説明しているのに「聞いていない」というクレームです。
患者様はその場では分かりましたと返事をしても、あとになるとよく分からないことや、理解があいまいなことを「聞いていない」と返してくることがあります。そうすると、「そんなことは聞いていない」と患者様は怒るわけです。
恩着せがましいようでも「今から○○さんの□□についての説明を始めます」と始め、最後に「○○さん、□□についての説明を終わりますが、ご質問はありませんか?」「それでは説明は終わります」と言って終わります。
説明しているのに「聞いていない」と言われることを未然に防ぐことでクレームによるストレスを軽減することもできます。
ほかにも患者様にどういう接し方をすれば親切になるかを教えてもらっています。挨拶や笑顔で印象が決まると教わったのでマスクをしていても笑顔が伝わるように、どんな笑顔が良いかみんなお互いに見ながら笑顔づくりをやったこともあります。
こうしてセミナーをきっかけに、一人ひとりが接客態度により気を使うようになり、みんなでより良い歯科医院を作ろうと同じ目標に向かって努力するようになりました。
接遇セミナーを受けてから院内の雰囲気はとても良くなり、時を同じくして新規オープンの内覧会がありました。内覧会は、道端で通り過ぎる人に声を掛けて院内に入ってもらい、歯の相談を受けながら予約を入れてもらう、オープン時のとても大切なイベントです。
スタッフには前もって「今回の内覧会はAさんとBさんでいくから一緒に頑張って。期待しているからね」と送り出します。その内覧会を担当した女性スタッフの接客態度がすばらしくて感動したのを私は今でも忘れられません。
その日休みで給与が出ないのに、医院の一大事だからと駆けつけてくれるスタッフもいてうれしかったです。
挨拶の仕方や会話のコツを先生から教えてもらったように頑張っていました。患者様に時間を掛ければいいというものではなく、限られた時間のなかでどれほど患者様のことを思いやって相談に乗れるかが大切です。
歯科医院は治療だけではなく、マナーや心が通じ合う会話をすることも大事だと、スタッフの姿を見て改めて教えられました。
今は接遇マナーもテクニカルな部分と同じく繰り返し受講して勉強と経験を重ねることで、特別なものから当たり前のことに変化していくと感じています。何事も一回教わり完璧になるというものではないですから、定着させるには定期的に受講する必要があります。するとスタッフの目覚ましい成長が見られます。
お金のセミナーで長く働くメリットを理解してもらう
もう一つ全員に受けてもらうのがお金のセミナーです。
目的は仕事をし続けることの大切さを感じてもらうことです。「ここで長く働くと得する」ことを実感してもらいたいのです。老後2000万円問題から始まり、社会保険に加入していることがいかに大切か、退職金がある企業がどれほど良いか、そして退職金が老後の人生になくてはならないものだと教えてもらっています。
日本人はお金の話を避けたがります。お金は生きていくためになくてはならないものですし、避けないでお金と向き合うことは大切だと思います。
退職金制度を設けたときに私がお金の話をすると、スタッフにいい顔をされませんでした。その退職金は訳の分からない保険に入れと言われているようだと敬遠されたのです。
ですがスタッフの懐は痛めずすべて会社のお金で積み立てていることが分かると、不平や文句を言う人はいなくなりました。
「退職金はありがたい制度」だということを言わないとスタッフには伝わりません。しかしそれを経営者に言われるより、外部の人に言われたほうが素直に受け取れます。
「ここの退職金はすごいですね」、「この会社は皆さんのことをよく考えていますね」と講師が言うだけで、スタッフに社会保険や退職金のありがたみや大切さを十分に知ってもらえるのです。
村瀬 千明
歯学修士
日本矯正歯科学会認定医
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