(※写真はイメージです/PIXTA)

4つの歯科医院を運営する村瀬千明氏は、労働環境の改善によってやる気のある女性スタッフが多く集まる歯科医院づくりを実現しました。今回、診療時間を短縮したにもかかわらず、売上は下がらずに経営が安定したワケについて、村瀬氏が詳しく解説します。

女性スタッフが復職時に重要視するのは診療時間

出産や育児を理由に辞めても、30代以降に復職を考える歯科衛生士や歯科助手などの女性スタッフも少なくありません。そして復職の際に待遇のなかで重要視されるのが「勤務時間」なのです。

 

厚生労働省の科学研究成果データベースの報告書によると(※)、いったん離職した歯科衛生士が復職を考えたきっかけとしては、「子育てなどがひと段落したから」が45.1%で最多でした。
※ 厚生労働科学研究費補助金 地域医療基盤開発推進研究事業「歯科医療従事者の働き方と今後の需給等に関する調査研究(19IA1010) 令和元年度 総括・分担研究報告書」

 

また復職の際に重要視することとしては「勤務時間」を挙げた人が最も多かったです。このようにいったん離職した歯科衛生士や歯科助手は、「勤務時間」の条件さえ合えば復職する可能性は大きいと思います。

 

復職しようとする子育て世代は、保育園の閉園時間や学童保育から子どもが帰る時間までに自分も帰ることができる仕事を探します。すでに子どもとの生活パターンが出来上がっており、それを崩したくないという思いからです。診療時間が夜7時や8時まで、または土日祝日も診療する歯科医院に勤務するのは不可能です。

 

子どもがいない若い世代も、男女、未婚・既婚を問わず、仕事一筋よりもプライベートを大事にする傾向があると思います。仕事最優先でプライベートを犠牲にしてでも働く時代は終わっているのです。

 

私の歯科医院でも当初、診療時間を短くすることで売上が下がるのではないかという不安で決断を迷っていました。

 

しかしそもそもスタッフがいなければ診療することはできません。そして人員を確保することを優先し女性スタッフが働きやすい労働時間にした結果、心配していた売上低下はなく、人員が確保できたことで経営は安定していきました。

 

また厚生労働省が発表した「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると(※)、就業している歯科衛生士の人数は14万2760人、一方で歯科医療振興財団の事業報告によれば、2019年2月時点の歯科衛生士名簿登録者は28万3032人いるのです。
※17 厚生労働省「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」

 

つまり歯科衛生士の資格をもちながら、就業していない人が約14万人も存在しているのです。有資格者数の実に半数を占める人が、その資格である歯科衛生士の職に就いていないのです。

 

これは潜在歯科衛生士と呼ばれ、人手不足を解消するためには、そういった人材を有効に活用することが大切だともいわれています。

 

患者様の通いやすさばかりを優先して診療時間を設定していたら、医療提供側の体制が固まらず経営の安定にはつながりません。

 

働き手世代にまずは歯科衛生士という仕事を選んでもらい、そのなかから自院を職場として選んでもらう必要があります。そのためには働く人の働きやすさを優先し、その時代に生きる世代の価値観に合わせた環境を提供していかなくてはいけません。

 

売上を優先したり患者様の都合が大事だと考えたりしていては、その前に重要視すべき人員確保はいつまでもできないのです。

 

 

村瀬 千明

歯学修士

日本矯正歯科学会認定医

 

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※本連載は、村瀬千明氏の著書『歯科医院の成功は女性スタッフで9割決まる』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

歯科医院の成功は女性スタッフで9割決まる

歯科医院の成功は女性スタッフで9割決まる

村瀬 千秋

幻冬舎メディアコンサルティング

日本では歯科医師の数が年々増え続けており、歯科医院は競合が激しいなかで生き残っていく必要があります。 しかし、歯科医院は歯科医師の高い技術さえあれば経営が成り立つほど単純ではなく、実は女性スタッフの働きこそが…

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