メンタルに頼らず冷静に実行する!
元CIAの諜報員ジェイソン・ハンソン氏は、現在、ビジネスパーソン向けの身の安全とサバイバルに関する情報を提供する会社を経営している。彼は『超一流の諜報員が教えるCIA式極秘心理術』『状況認識力UPがあなたを守る』の2冊の著書を執筆している。
ハンソン氏は著書の中で「CIA捜査官が生き残れるかどうかは、究極的には、状況認識能力にかかっている」と言っている。さらに、彼は状況認識に努めるだけでなく、「回避のための迅速な行動を取れ」ということも言っている。状況把握の先にある状況判断を迅速かつ適切に行なう。そして、判断と行動を一体として行ない、危機を回避することが重要なのである。
常日頃からリスクを把握して、適宜適切な状況判断を行なえば、メンタルに頼らず冷静にものを考えたり、行動ができる。私が赴任したバングラデシュは、当時少しだけ物騒な世情にあったが、無事に3年の任務を全うできたのは、危険な状況に至る前にリスクを回避したからだと言える。
CIAの養成所〈ロングコース〉では、1年半にわたる過酷な訓練の中で、テロリストから貴重な情報を引き出す方法から尾行をまく方法まで、ありとあらゆるスキルを叩き込まれるという。そして、臨機応変に対処できる優秀な諜報員が養成される。
ハンソン氏によれば、こうした優れた諜報員は作戦計画を練る場合、ミーティングの冒頭で機密保護、身の安全、健康問題、そして緊急時の作戦中止などに関して活発に討議する、と言う。それを終えてから、現地の協力者と秘密裏にコミュニケーションを取る具体的な計画を立てるのだ。
ビジネスパーソンが何か物事を行なう前には、現状の把握、リスクやアクシデントを見積もって、それを回避する対策を考えておくことが肝要だ。
リスク管理の2つの鉄則
諜報員ならずとも、多くのビジネスパーソンが、リスクやアクシデントと隣り合わせである。危機管理とリスク管理という2つの言葉があり、これらを合わせて広義の意味で「危機管理」と言っている。
多くのビジネスパーソンに求められるのは、リスク管理のほうである。「すでに危機が発生した場合に取る対策」を危機管理という。リスク管理は、「危機が起こらないように、そのリスクの原因を低減する」ことに主眼が置かれる。
リスク管理のほうが「費用対効果」が格段に良い。リスク管理の第一の鉄則は、「目立ちすぎないこと」である。理想的な諜報員とはジェームズ・ボンドのような人物ではなく、ごく平均的であって、目立たないことが重要であるということは先に述べた。目立つことは危険なのである。