消費は波に乗れず…ゼロコロナの影響大きく
都市部固定資産投資は7~9月期で前年同期比5.7%増だった。1~9月期は同5.9%増で成長ペースが徐々に戻ってきた。直近では製造業が10%台で安定推移しており、なかでもハイテク分野が1~9月期で同23.4%増と好調だ。電子・通信設備が同28.8%増、医療機器設備が同26.5%増と旺盛な投資となっている。
インフラ投資も右肩上がりで伸長中。ただ、不動産開発は依然としてマイナス成長が続く。1~3月期は同0.7%増だったが、それ以降は下落基調。1~9月期は同8.0%減まで落ち込んだ。通年で前年割れとなれば1997年以来25年ぶりのことになる。
消費も波に乗り切れていない。社会消費品小売総額は都市封鎖の影響で3月から5月まで前年割れ。8月に前年同月比5.4%増まで戻したものの、ゼロコロナ政策の影響で行動規制が厳しくなった9月は同2.5%増に減速した。
特に被害が大きいのは外食産業。8月は同8.4%増と年初以来のプラスだったが、9月は同1.7%減とマイナス成長に逆戻り。中国現地では中小飲食店を中心に閉店が増えており、旅行需要の縮小で観光地も閑古鳥状態のところが多い。業界の浮沈は政策次第だが、年末にかけてはこの不安定な状況が続くと思われる。
中国人民銀行(中央銀行)の都市部預金者アンケートからは市民の貯蓄志向の高まりがわかる。
新型コロナ感染拡大後に「貯蓄」比率が50%を超え、直近の22年第3四半期では58.1%に上った。一方、「消費」は20%台前半で推移。「投資」は長期にわたり右肩下がりだ。将来への不安から市民の財布のひもが固くなっているよう。
逆に言えば、現行の厳しいゼロ政策が少しでも緩和方向に向かえば消費マインドが回復してくる可能性が高いと考えられる。
奥山 要一郎
東洋証券株式会社
上海駐在員事務所 所長