(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、東洋証券株式会社の中国株コラムから転載したものです。

10月末に開業した「世界最大の免税モール」

南国特有の蒸し暑さと人いきれ。ブランド店に列をなす買物客。スマホ片手に大声でまくしたてる転売ヤーと思しき人たち……。いかにも中国らしい喧噪を味わったのは久しぶりだ。

 

ここは海南島の海口国際免税城。10月28日にオープンした世界最大の免税モールである。東京ドームの約4倍の面積を誇る巨大施設には、開業初日だけで4万4000人が来訪。販売額は6000万元(約12億円)を超えた。

 

[図表]開放感にあふれる海口国際免税城

 

中国最南端に位置し“中国のハワイ”と称される海南島は、いまや「免税アイランド」として名を馳せる。2011年に離島免税政策がスタートし、一般市民が海外旅行をせずとも海南島で免税ショッピングを楽しめるようになった。

 

当初の免税購入限度額(1人当たり)は年間1万元だったが、20年に10万元まで引き上げられ、一気に注目度が高まった。新型コロナ禍で海外に出られない中国人の免税品購入ニーズを一気に引き受けた。

 

“コロナ前”の19年時点で4ヵ所に過ぎなかった海南島の免税店は、冒頭の海口国際免税城が開業して10ヵ所に増えた。このうち6つを最大手の中国旅遊集団中免(601888)が経営している。来年1月には王府井集団(600859)が同島の万寧で免税店をオープン予定だ。

ロックダウンで足止め…店より目立つ「PCR検査場」

21年の海南島の免税品販売額は前年比8割増の495億元と絶好調。今年の春節連休中(1/31~2/6)も前年同期比156%増の19億4400万元と大幅に伸びた。

 

ところが、春先から中国各地でロックダウン(都市封鎖)が相次ぐと状況は暗転。上海のロックダウンで、お得意さまだった上海人の消費がほぼなくなったことも影響したのだろうか、4月の販売額は10億元余りにとどまった。春節で盛り上がった2月(約68億元)のほぼ7分の1である。

 

その後、夏の観光シーズンに向けて回復の兆しが見えてきたが、今度は8月に海南省地元のリゾート地、三亜がロックダウン。海口でも断続的な行動規制が行われた。8月の免税販売額は9億6000万元程度。コロナ禍初期の20年3月の数字も下回る。

 

10月下旬の海口。街中では観光客の姿はまばらだった。郊外の新規開発エリアにある海口国際免税城の盛り上がりはすさまじかったが、市の中心部はいたって平静。市中免税店は閑散としており、2年前の混雑ぶりからは大きくかけ離れた状態だった。

 

その代わり、目立っていたのは無料のPCR検査スポット。歩道に簡易テントを設置しただけの“ほぼ青空検査場”もあった。市内から車で30分ほどのところにあるアウトレットモール型免税店では、巨大なエントランススペースがそのまま近隣市民のPCR検査会場となっていた。

 

各種施設に入るためには陰性証明が必要。筆者も現地滞在中の3日間、毎日検査をしました。

 

今回、上海から海口へ向かうフライトは満席だった。筆者は機内で「免税品ニーズが復活か?」とひそかに思っていたが、その3分の1ほどは大学生だった。夏のロックダウンとその余波で海南島の大学に戻れずじまいだった学生たちが続々と“帰還”を果たしていたようだ。

 

まずは日常生活の回復が先決。その次に観光の戻りだろうか。来年1月の春節に向けて本格的な観光業回復を期待したい。

 

 

奥山 要一郎

東洋証券株式会社

上海駐在員事務所 所長

 

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