特殊な間取りの「建物」、特殊な形をした「土地」といった「難あり」の不動産物件も、その特性を生かした売り出し方を工夫することにより、思わぬ高値がつくこともあります。建物が「店舗兼住宅」、土地が「台形状」と、買い手がつきにくい「二重苦」だった東京都墨田区の自宅を、当初査定価格の1.5倍の高値で売却することに成功した三田さん(女性・60代※仮名)の事例を紹介します。

あえて「ターゲット」を絞り込んで売り出す

一般論として、不動産を「早く」そして「高く」売るうえでポイントとなるのは、より多くの買い手候補に情報を届けるため、ターゲットを限定せず幅広い広告展開をすることです。これまでの売却事例ではまさしくその正攻法を行うことで、理想の買主を見つけることができました。

 

しかし、今回の場合は戦略を変え、物件を不動産仲介業者による「囲い込み」から解放しつつも、ターゲットを絞り込んで販売する作戦に切り替えました。土地の形状が変わっており、効率的な使い方が限定されている土地ゆえの、一風変わった販売方法です。

 

アパート用地を探している方に、本物件の魅力をどれだけ伝えられるかが勝負です。ターゲットは自己居住するのではなく、投資目的で土地を探しているのですから、それに見合った広告を作る必要があります。

 

そこで、アパート建設のために必要な情報を販売資料として提供するため、エージェントBは再び現地調査に乗り出しました。第一段階は周辺地域に建っている建物など「見える部分」の調査に終始しましたが、今回は表面的には「見えていない部分」の調査が主体となります。

 

まず土地のさらに詳しい調査です。水道やガスの配管について調べ上げました。さらにアパートを建てるならどのような間取り設計が望ましいかを考えました。付き合いのあるアパートメーカーに協力を要請する一方で、周辺アパートをより深く調べ、不動産情報サイトなども参考にして、単身者向けのワンルームにするべきか、1LDK以上のファミリー向けとするべきかを検討しました。

 

その結果、「ワンルーム2階建て全10世帯のアパート」を建てるのが最適であるという参考値を出すことができました。これならダイヤモンドの特殊な地形を最大限有効活用でき、なおかつ他の物件と比較しても遜色ない収益を出すアパート用地になると判断できました。

 

さらに再び役所へも足を運び、アパートを建設するうえで、広さや素材など、条例による制限あるいは緩和措置がないか調べました。とはいえ、どのような条例が適用されるか、一つひとつ地道に調べ上げるのは至難の業です。そこでちょっとした裏技として活用するのが、本物件周辺に建っているアパートの「建築計画概要書」です。

 

建物計画概要書はすべての建物建設に必要な建築確認申請の際に提出する資料のことで、建築計画の概要を記している書類です。

 

そこには建設時に適用された条例も記載されており、周辺アパートの建物計画概要書を閲覧することで今回のアパート建築プランのケーススタディにすることができるわけです。役所に保管されるものなので、土地建物を所有する発注者や施工会社だけでなく、然るべき手続きを取れば誰でも取得閲覧できます。

悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

大西 倫加,長嶋 修

幻冬舎メディアコンサルティング

不動産売却を検討する人は必読の一冊! 後悔したくなければ「不動産エージェント」を選択せよ! 売主第一主義か?自社利益最優先か? 不動産業者は千差万別! 正しいパートナー選びが売却の成否を分ける――

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