特殊な間取りの「建物」、特殊な形をした「土地」といった「難あり」の不動産物件は価格が低くなる傾向があります。しかし、発想を転換して売り出し方を変えることにより、思わぬ高値がつくこともあります。建物も土地も「難あり」だった東京都墨田区の自宅を、当初査定価格の1.5倍の高値で売却することに成功した三田さん(女性・60代※仮名)の事例を紹介します。

徹底した現地調査で「答え」を探す

このケースにおいても、不動産仲介者による、売主と買主の双方の代理人として「両手取引」を行って手数料を双方から受け取るための物件の「囲い込み」の可能性は感じられました。

 

買取業者に売るための見積もりを不動産仲介会社が請け負ったわけですが、見積もり作成を依頼した5社というのは、仲介会社が日ごろから懇意にしている協力会社らしいと分かりました。つまり「両手取引」できる対象に絞って査定依頼していると考えられるのです。

 

そもそも買取業者へ売るのであれば、買取業者向けに土地だけの価格へ変更して改めてレインズに情報を掲載すればいいわけです。それをしないで水面下で話を進めているのは、「囲い込み」以外の何ものでもありません。

 

「囲い込み」から解放し、片手取引でレインズに土地だけの販売にて掲載すれば、5,000万円より高く売れる可能性はあります。ただ三田さんが希望している7,000万円に届くかというと、これはかなり厳しいです。

 

もしかしたらもっとうまく土地活用したプランニングを思いつくかもしれないと感じたエージェントBは、まずは現地調査を徹底することから着手しました。

 

長方形や正方形の土地であれば、現地を見なくとも最適な売却プランは提案できます。しかし今回は台形という珍しい形をした土地で、200平米と広大です。

 

こういった答えの見出しにくい土地の運用については、デスクであれこれ考えてもいいアイデアは出てきません。何も先入観をもたず、売却しないという選択肢も解決策の一つとして視野に入れながら、現地調査をするのがエージェントBの流儀でした。

 

改めて現地にて三田さんの建物を見たところ、築30年としてはきれいな外見と内装ではありましたが、やはり住居部分が2階のみというのはネックでした。不動産仲介会社が提案したとおり、建物は解体前提で土地だけの販売にするのが正しいように思われます。

 

ただ、ここで一つの課題があります。1階部分ではもともと飲食店を営んでおり、業務用の設備がひととおりそろっている状態でした。これらは撤去時に特殊なプロセスを踏むことになり、解体費用は高めに見積もる必要があります。

 

その次に、土地周辺の調査を行うため、三田さんの不動産がある地域ではどういったニーズがあるかをつかもうと現地を歩きました。三田さんの不動産は最寄りの駅から徒歩6分ほどで、駅から同程度の距離にある土地にはどういった建物が建っているかを調べていったところ、アパートが多いことに気がつきました。

 

さらに細かく、入居者募集中の看板が掲げられているかどうかも調べ上げてみると、古いアパートを除けばほぼすべてのアパートが満室状態のようでした。つまり、この地域はアパートのニーズがかなり高いことになります。

 

「三田さんの土地もアパート用地として建てるのが最も最適な利用法なのではないか」と、手応えを感じたエージェントBは後日、役所へ向かいました。土地にはさまざまな規制があり、用途が制限されています。日当たりの関係で高さが制限されていたり、建てられる建物の規模が限定されていたりしないかなど、役所で情報を取得しました。その結果、建蔽率は60%、容積率は200%制限で、高さに制限はありませんでした。オーソドックスな条件であり、問題なくアパートを建てることができます。

 

これらの調査を踏まえて、エージェントBから三田さんへ、周辺に点在するアパートをマーキングした地図とともに結果報告と提案を行いました。

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悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

大西 倫加,長嶋 修

幻冬舎メディアコンサルティング

不動産売却を検討する人は必読の一冊! 後悔したくなければ「不動産エージェント」を選択せよ! 売主第一主義か?自社利益最優先か? 不動産業者は千差万別! 正しいパートナー選びが売却の成否を分ける――

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