中古不動産の価値を決めるのは、「立地」と「築年数」だけではありません。住む人が建物を大事にしてきたかということや、維持管理や修繕の状況等の条件によっても大きく変わってきます。ケースによっては、新築同然の値がつくこともあります。本記事では、埼玉県春日部市にある築25年の自宅を売却した仁川さん(女性・60代※仮名)の事例を紹介します。

築25年なのに「ほぼ新築」の優良物件だった!

依頼を受けた当初、担当エージェントBは、不動産仲介会社がつけた1,700万円前後という査定価格について「妥当だな」と感じていました。

 

なぜなら、税法上、木造の耐用年数は22年とされているため、築20年以上の戸建て住宅はほぼ価値なしと判定されるのが一般的だからです。定額法による減価償却の観点から取得価格の1割は価値が残っているとしても、その額はせいぜい150から300万円ほどです。土地の周辺相場から算出した1,700万円という査定価格は現実味を帯びているといえました。

 

しかし、実際の建物敷地へ足を踏み入れた瞬間、担当エージェントBは「1,700万円は妥当」の先入観をかなぐり捨てたくなるほどの衝撃を受けました。まるで新築物件と見間違うほどの外観と内装だったからです。

 

車庫つき2階建ての4LDKで、外壁の塗装は汚れや傷がいっさい見当たらず、まだ光沢を放っているほどです。屋根の状態にも劣化は見られません。内装は、フローリングは張り替えを行っており新品同様、壁紙クロスにもやはり汚れや傷は見られません。キッチンやバスルームなどの水回りも手入れが行き届いておりピカピカです。

 

引っ越してきてから10年、毎日清掃を徹底し、大切に使われてきたことが誰でもひと目で分かる家だったのです。

 

中古物件のイメージを根底から覆されるほどの衝撃でした。担当エージェントBの長い経験のなかでも、これほど新築に近い築25年物件は見たことがありませんでした。同時にBは、この建物に評価がつかないなんて絶対にあってはいけないと実感しました。

 

同じ築25年でも、雨漏りが酷かったり、外装がボロボロだったり、フローリングが傷だらけだったりする物件はいくらでもあります。それらと、大事に手入れしてきた家の価値を同等と評価するのは、あまりにも失礼なことだと、査定価格に納得できない仁川さんに強く共感したのです。

 

立地も好材料でした。最寄りの駅からは徒歩5分ほど、閑静な住宅街の落ち着いた雰囲気のなかに位置しています。歩いてすぐのところにある国道沿いまで出ればスーパーやコンビニ、飲食店はたくさん並んでいます。生活に不便を感じることのない住環境でした。

 

実物を目の当たりにした今、担当エージェントBは一般的に築25年の木造は建物価値がないため不動産仲介会社の査定どおり土地価格の1,700万円前後での売却が妥当であるとは間違っても口にできませんでした。この家の本当の価値を分かってくれる方に買ってほしいと切実な思いを吐露する本人を前に、Bは一つの画期的なアイデアを思いついていました。

 

 

大西 倫加
さくら事務所 代表取締役社長
らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
だいち災害リスク研究所 副所長

 

長嶋 修
さくら事務所 会長
らくだ不動産株式会社 会長

悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

大西 倫加,長嶋 修

幻冬舎メディアコンサルティング

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