都内のマンションに住む市原さん(仮名)は、住み替えのためマンションの売却を大手不動産仲介会社に依頼しました。ところが、人気エリアの優良物件なのに、内見の申し込みすらありません。仲介会社は希望価格を引き下げて不動産買取業者に売るようすすめてきました。困った市原さんは、セカンドオピニオンを求め「不動産エージェント」に相談し、担当エージェントは「売れない」理由を探るべく情報収集に乗り出しました。

不動産買取業者を巻き込んだ「囲い込み」の疑惑も…

さらにもう一つ、市原さんが依頼している不動産仲介会社には狙いがあったと考えられます。

 

仲介会社の担当者は、販売開始後1カ月間、内見の申し込みが一件もないと報告し、リフォームしてから販売することを事業とする買取業者への売却を提案していました。これにはおそらく裏があり、買取業者に売却しリフォームしたあと、さらに自社にて売却の仲介を請け負う狙いがあったと推測できます。

 

つまり、まず不動産買取業者と市原さんとの間で「両手取引」にて、4,700万円で売買を仲介します。この時点で5,000万円の片手取引よりも高い利益を得られるわけです。さらに買取業者がリフォームした物件も仲介し、売却するのです。

 

相場を考えると、リフォーム済みのマンションであれば6,000万円半ばで売れます。その際も両手取引ができれば、手数料はかなりの稼ぎになるというわけです。一つの物件で2倍どころか3倍も4倍も儲けられるカラクリです。

 

仲介会社に本当にそのような狙いがあったかは確実ではありませんが、周辺の同型マンションの過去の取引事例や、仲介会社の担当者の応対や報告を見る限り、そのような狙いが透けて見えるようでした。

 

まさか、売れない理由が物件ではなく依頼先にあったと分かり、市原さんは唖然とするばかりです。担当エージェントAは、まずは不動産を囲い込み状態から解放することで販売網が広がり、より多くの方の目に留まるようになるため問い合わせも増えるだろうと強調したうえで、多少の時間は掛かるかもしれないが5,300万円前後での販売にチャレンジするのも一手だと付け加えました。

 

人気エリアの物件ながらなかなか内見に結びつかなかったのは、不動産仲介会社の囲い込みによる可能性が高いこと、相場からみて5,000万円の売却額が安値であること、4,700万円で買取業者に売ることが市原さんにとっては確実に損であることが、担当エージェントAの情報収集によって判明しました。

 

加えて、過去の売却事例や需要調査から、5,300万円前後の価格帯でも売却が可能であるという分析結果も提示すると、市原さんは、「セカンドオピニオンを求めて正解だった」と、疑問が解消され満足した表情で帰りました。

 

数日が経ち、大手不動産仲介会社での売却依頼を取り下げた旨の連絡がありました。そして、改めて担当エージェントAに、半年後でも1年後でも構わないから、買主を見つけてほしいと依頼があったのです。

 

 

大西 倫加
さくら事務所 代表取締役社長
らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
だいち災害リスク研究所 副所長

 

長嶋 修
さくら事務所 会長
らくだ不動産株式会社 会長

悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

大西 倫加,長嶋 修

幻冬舎メディアコンサルティング

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