(写真はイメージです/PIXTA)

世界全体が急速な技術発展とともに成長するなか、「失われた30年」との言葉があるように、日本は「名目成長ゼロ・物価上昇率ゼロ・金利ゼロ」と停滞が続いてきました。そのようななか、経済成長の停滞を肯定する論調が蔓延してきたと、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏はいいます。日本の長期停滞を生みだした要因とはなにか……バブル崩壊後、日本を「停滞国家」に変えた黒幕の正体をみていきましょう。

「デフレ均衡」を固定化させた巨額の資本流出

よくみると日本のすべてが停滞していたわけではなかった。1人当たり労働生産性は上昇していた。企業利益は顕著に増加した。株価も2013年以降は大きく上昇した。

 

にもかかわらず、名目成長ゼロ・物価上昇率ゼロ・金利ゼロの頑強な安定が続いたのは、日本からの資本漏出(=ビジネス機会の漏出)が続いていたから、と大雑把に考えて間違いではないだろう。

 

[図表1]は企業における1人当たりの物的生産性、付加価値生産性、労働報酬の推移であるが、日本企業は世界的技術発展の恩恵を受け、物的生産性をそれなりに上昇させてきた。

 

にもかかわらず、円高とデフレによる販売価格低下により、企業には生産性上昇の果実が残らず、付加価値生産性は横ばいであった。しかし労働報酬はそれ以上に抑制され、それによって企業利益が確保された、という関連が明白に見て取れる。

 

[図表1]物的生産性・付加価値生産性と資金推移

 

日本の企業、銀行、機関投資家はこぞって貯蓄を海外へシフト

日本企業は円高と国内需要の蒸発という環境に対して、海外生産移転、海外事業拡大で対応した。海外投資を拡大し、海外所得依存を高め、増加した連結収益を海外に再投資することで、成長を続けることができた。

 

他方、企業は国内投資を抑制し、財務レバレッジを低下させた(内部留保を拡大した)。[図表2]は日米の名目GDPとGNI(GDP+海外所得)の推移であるが、GDP(国内での価値創造)はまったく停滞していたが、それに海外所得を加えたGNIは米国ほどではないが成長していたことがわかる。

 

[図表2]日本の名目GDPとGNI(GDP+海外所得)の推移(1990=100)

 

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※本記事は、武者リサーチが2022年10月25日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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