「デフレ均衡」を固定化させた巨額の資本流出
よくみると日本のすべてが停滞していたわけではなかった。1人当たり労働生産性は上昇していた。企業利益は顕著に増加した。株価も2013年以降は大きく上昇した。
にもかかわらず、名目成長ゼロ・物価上昇率ゼロ・金利ゼロの頑強な安定が続いたのは、日本からの資本漏出(=ビジネス機会の漏出)が続いていたから、と大雑把に考えて間違いではないだろう。
[図表1]は企業における1人当たりの物的生産性、付加価値生産性、労働報酬の推移であるが、日本企業は世界的技術発展の恩恵を受け、物的生産性をそれなりに上昇させてきた。
にもかかわらず、円高とデフレによる販売価格低下により、企業には生産性上昇の果実が残らず、付加価値生産性は横ばいであった。しかし労働報酬はそれ以上に抑制され、それによって企業利益が確保された、という関連が明白に見て取れる。
日本の企業、銀行、機関投資家はこぞって貯蓄を海外へシフト
日本企業は円高と国内需要の蒸発という環境に対して、海外生産移転、海外事業拡大で対応した。海外投資を拡大し、海外所得依存を高め、増加した連結収益を海外に再投資することで、成長を続けることができた。
他方、企業は国内投資を抑制し、財務レバレッジを低下させた(内部留保を拡大した)。[図表2]は日米の名目GDPとGNI(GDP+海外所得)の推移であるが、GDP(国内での価値創造)はまったく停滞していたが、それに海外所得を加えたGNIは米国ほどではないが成長していたことがわかる。
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