利上げの打ち止め水準を考えるときに必要なこと3つ
ごく簡単にいえば、金利がインフレ率よりも低いということは「預金は不利で、消費や投資が有利」ですから、経済に引き締め圧力は生じません。
実体経済にこれほどのインフレ圧力が生じているときに、あなたが米連邦準備制度理事会(FRB)の議長であれば、少なくとも、①政策金利がインフレ率の上に「顔を出す」ような時点まで利上げを進めてから、「打ち止め」にしたいと考えるでしょう。
「インフレ率が下がれば、打ち止め水準も下がる」と思われるかもしれませんが、「インフレ率を下げるために、利上げが必要」というのが適切な向きです。
もうひとつ重要なことは、②「インフレ目標はコア・インフレ率で2%」ですから、政策金利がコア・インフレ率を上回っても、2%に確実に下がることを見届けるまで利下げには転じられないだろうということです。このことは、A.「打ち止め」の水準を引き上げるか、B.「据え置き」の期間を長くするかのどちらか、もしくは両方によって達成されることになります。
利上げの打ち止め水準を考えるときに必要なこと3つ(のつづき)
そして、もうひとつ、③(FRBが好んで使う)PCEデフレーターによるインフレ率と、もうひとつの物価指標であるCPIインフレ率を比べると、PCEデフレーターは0.5%~0.7%程度、低く出る傾向があります。
実際、直近8月もPCEコア・インフレ率(前年同月比)は4.9%であるのに対して、同月のCPIコア・インフレ率(同)は6.3%に上っています。
正確なインフレ率を計測するのは困難であり、政策金利が「PCEコア・インフレ率」を多少上回っていても、実際のインフレ率はそれよりも高く、実質政策金利がマイナスのまま、緩和的であるリスクがあります。
インフレの抑制が現下のより重要な目標である以上、政策金利を「PCEコア・インフレ率」よりも幾分高めに引き上げておくほうが、安全であることを示しています。
米国の政策金利と長期金利は「5%超え」の可能性も
以上でなんとなく、政策金利が5%を超える水準まで引き上げられても不思議ではないとお思いいただいたかもしれません。
過去の多くのケースでは、長期金利は、政策金利の打ち止め水準付近か、それ以上の水準にまで上昇しています。
以上、非常にシンプルですが、長期金利の上限について考えてみました。
政策金利の引き上げは、実質金利を引き上げるためのものですから、これが正しければ、株価のバリュエーションにはまだダウンサイドがあるということになるでしょう。
重見 吉徳
フィデリティ投信株式会社
マクロストラテジスト
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