(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

ハンセン指数 15,165.59 pt (▲0.10%)
中国本土株指数 5,180.31 pt (+1.29%)
レッドチップ指数 3,122.90 pt (▲0.19%)
売買代金1,434億5百万HK$(前日1,617億5万HK$)

習氏「1強」体制により、さらなる経済失速の見通し

今回の中国共産党大会を経て、海外投資家の株売りは一層強まっている。24日の中国本土と香港の株式市場で外国勢の中国本土株売越額は約179億元と過去最大となり、年初来で小幅な売り越しに転じた。

 

もし年末まで売り越しが続けば、香港との2014年のストックコネクト導入以降、初めての年間売り越しとなる。

 

海外投資家の中国市場の見方は厳しい。党大会で新型コロナを巡って、現状敷かれている「ゼロコロナ政策」の方向転換が示唆されなかったことに加え、短期的な経済対策について議論がなかったことは失望材料になった。

 

また、党大会開催期間では相次いで重要な経済指標の発表が理由もなく延期し、信用の失墜につながったことも危惧される。

 

今後は習氏「1強」がいっそう鮮明となり、「ゼロコロナ」政策をはじめ施策判断の問題点が軌道修正されず、経済の失速や対外的な軋轢が深まるリスクが大きいとみられる。

 

今回の一連の決定事項は、中国が世界的に孤立する可能性も示唆されており、外国人投資家の資金撤退が長期化するリスクも容易に考えられる。今後の新体制で何らかしらの対策が出るか注目となる。

香港は金融株を中心に下落もハイテク株は上昇

今年最大の下落率を記録したハンセン指数は翌25日も投資家心理の警戒を強めた。寄り付き後、同指数は一時1.5%下げ、心理的節目の15,000ポイント割れとなった。自律反発の買いが先行するも上値は重い展開となった。

 

25日のハンセン指数は大引けにかけて再び反落し、前日比0.10%安と5日続落した。終値ベースでは連日、安値を更新し年初来のパフォーマンスは35.1%の下落となった。

 

投資家の中国経済に対する警戒心が色濃く残り、金融株を中心に指数を押し下げた。国際金融のHSBC(0005)は5.1%安、香港大手行のハンセン銀行(0011)は3.8%安、中銀香港(2388)は3.3%安、保険大手のAIA(1299)は2.7%安と下げた。

 

前月の不動産販売などが依然として軟調だったことも重石となり、不動産株が下落。不動産開発の中国海外発展(0688)は5.4安、香港不動産デベロッパーの新鴻基地地産発展(0016)は3.1%安、不動産投資会社の九龍倉置業地産投資(1997)は2.7%安、香港の大手コングロマリットの新世界発展(0017)は2.2%安だった。

 

一方、前日急落したハイテク株に買い戻しがみられ、ハンセンテック指数は2.96%高とアウトパフォームした。オンライン医療の阿里健康 (0241) は8.2%高、阿里健康 (0241) は6.4%高、スマホ部品の比亜迪電子(0285)は5.6%高、PC大手のレノボ(0992)は5.1%高と上げ幅が目立った。

 

中国本土株は上海総合指数は前日比0.04%安の2.976.28と続落、CSI300は同0.16%安の3,627.45と5日続落した。中国人民銀行は25日、人民元の中心レートを1ドル=7.1668元と、2008年以来の元安水準に設定した。

 

これまで元高方向に抑え込んでいた中心レートから元安を容認した結果となり、オフショア人民元は1ドル=7.36元台を突破し安値を更新した。

 

市場は中国の新指導部の経済や対外政策を巡る先行き不透明感がくすぶり、中国本土からは為替と株の双方に資金流出がみられる結果となった。

 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

 

 

 

 

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