【米国経済】マクロ経済見通し…米国は景気後退に陥るのか?

本記事は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社が10月20日に配信したレポート『フランクリン・テンプルトン債券グループによる見解』より一部を抜粋したものです。

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米国経済:景気後退に陥るのか?

米連邦公開市場委員会(FOMC)では先頃、持続的な金融引き締めを通じてインフレを抑え込む決意が明確かつ強力に示されました。

 

FRBのジェローム・パウエル議長やFOMCの他のメンバーは景気減速見通しを受けた市場の早期利下げ観測をけん制しています。7月のFOMCでは2会合連続で0.75%の利上げが全会一致で決まり、パウエル議長は9月も異例の大幅な追加利上げが行われる可能性があると発言し、FRBの利上げ局面はまだ終わりには程遠いことが明らかになりました。

 

パウエル議長は消費者物価指数のコア指数に加え、総合指数も検討対象になると発言し、自然失業率が「大幅に」上昇している可能性が高い(我々の推定では自然失業率はコロナ前の水準を1.5~2.0ポイント上回る)ことも認めており、足元で市場が織り込んでいる以上にターミナルレートが上方にシフトしていることを示唆しています。

 

しかし、市場はパウエル議長の数少ないハト派寄りの発言に注目しました。すなわち、政策金利は足元でFRBが中立的と考えるレンジの範囲内にあり、「金融引き締めのスタンスが強化されるにつれ、利上げペースを緩めることが適切になる」というものです。

 

その結果、7月のFOMC直後に株式市場や短期債の価格は高騰しました。市場は2023年2月までに政策金利は3.25%程度でピークを打ち、その後は積極的な利下げが行われるというシナリオを織り込みました(注1)。市場の金融緩和期待は金融引き締めの効果を一部打ち消すことから、FRBの任務の遂行は一段と困難になります。

 

(注1)出所:ブルームバーグ

 

パウエル議長は8月の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で説得力のあるはっきりした口調で金融市場をけん制しました。「いまやインフレ率を目標の2%に戻すことが(FRBの)至上命題である」と繰り返し発言し、「物価の安定」という表現を少なくとも10回は使いました。このことは、景気を冷え込ませ失業率の上昇させるため、一定の経済的苦痛を伴うと強調しています。

 

また、インフレ率が長く高止まりすれば、期待インフレ率が上振れし、賃金・物価スパイラルが定着するリスクが高まることも認めています。これを受けて市場ではターミナルレートの上振れ(2023年4月までに4.0%)が織り込まれ、来年の利下げ期待が一部、後退しました。

政策運営の先行きに対する見方は?

市場はなお金利が来年前半にピークを打ち、その後、劇的な金融緩和局面が始まるとの過大な自信に満ち溢れているとみられます。我々はインフレを確実に抑え込むためにFRBの利上げ局面は2023年第1四半期末まで長引き、その後は第3四半期から第4四半期まで利上げを休止すると考えています。

 

FRBの声明文からすると、ターミナルレートは最低でも4.5%には達し、確実に上振れするリスクがあると予想しています。また、9月は0.75%、11月は0.50%、12月も0.50%の追加利上げが行われ、政策金利は年末には4.25%に達すると予想しています。FRBは金融政策のショックや不安よりも引き締めサイクルの長さを強調したいとみられます。

 

一方で、FRBはデータとインフレを重視する姿勢を維持し、経済指標の発表を受けて市場が積極的な利上げを織り込み続ければ、市場に大きな混乱を招く可能性が低くなるため、FRBは一段と抑制的な領域に金利を誘導すると予想されます。

 

物価の安定を取り戻すには当面、金融引き締め政策を維持する必要があり、市場ではFRBの覚悟が再び試されることになりますが、我々は労働市場が痛みを感じ始めたとしてもFRBが金融引き締めの手綱を緩めることはないと考えています。

 

FRBの高官は多くの場で自然失業率がコロナ後に上昇した可能性が高いことを認めています。したがって、失業率が上昇したとしても、FRBは労働需給のバランスが改善したと判断すると思われます。FRBが利上げ局面の休止を検討し、最終的に金融政策を転換するには、労働市場が弱含み、インフレ率が確実に現在よりはるかに低い水準で持続的に安定する必要があります。しかし、インフレにはなおも強い慣性があります。

 

2022年末の消費者物価指数の総合指数の上昇率は8%近くで推移すると予想しており、それでもまだ実質金利は大幅なマイナスとなります。

 

物価水準などから機械的に適切な金利水準を算出する「テイラールール(TR)」(潜在GDPからの現実のGDPのかい離(GDPギャップ)と、FRBの物価目標からの個人消費支出(PCE)物価指数のかい離をともに均等加重)よると、TRに基づく政策金利は少なくともFRBが利上げを開始する4~5四半期前からプラスに転じています。

 

TRに基づく政策金利は2022年第3四半期にピークを打ち、その後は利下げが続きます。FRBとTRに基づく政策金利にはタイムラグがあり、FRBがインフレ退治に躍起になっていることからすると、FRBの金融政策の現実的な転換点は2023年第3四半期から第4四半期頃になると考えられます。

 

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