(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

ハンセン指数 16,511.28 pt (▲2.38%)
中国本土株指数 5,597.79 pt (▲2.75%)
レッドチップ指数 3,306.42 pt (▲0.58%)
売買代金847億5百万HK$(前日997億6万HK$)

市場は米国のターミナルレートを憂慮し、警戒ムード

19日、米債券市場では米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを加速させるとの観測が根強く、金利高に対する警戒感が強まった。10年米国債利回りは節目の4.0%を再び超えて上昇した。

 

金融市場では、今回の一連の利上げで、短期金利が最も高くなる金利 (ターミナルレート)がいったいどこまでになるのかを憂慮している。ひょっとしたら、今織り込んでいる水準よりもはるかに高い金利となり、利回り曲線は相当に高いところに引き上げられるのではないかとの懸念である。

 

米財務省が18日に発表した8月の対米証券投資統計によると、米国債への資金流入超過が過去最大の1,724億ドルだった。前月の230億ドルの流入超からさらに大幅な増加をしている。

 

3月、6月、9月とFOMCごとに3度も予想ターミナルレートの水準は切り上げられた。加えて、米国雇用統計、インフレ統計、消費動向と、いずれも足元の米国経済は好調であることを示している。このため、FRBはインフレ抑制のために強気に金利を引き上げる余地が拡大していると読んでいるのである。

 

為替では、主要通貨に対する対ドルベースを示すドルインデックスはやや軟化したものの、112.00 近辺と高水準は維持しており、膠着状態が続いている。対ドルで主要アジア通貨の下落傾向は明らかである。ドル円も150円を試す展開にあり、介入を警戒しながら、ドルはジリ高で149円40銭台の神経戦が続いている。

中国がGDPに続き、不動産関連統計の公表を延期

19日の香港市場は他アジア市場に対して大きくアンダーパフォームし、再び下落幅を広げた。ハンセン指数は4日ぶりの反落となるも、終日下げ幅を広げ前日比2.38%安で引けた。はっきりとしたネガティブな材料があるわけではないが、先週末から中国経済指標の発表延期が続いていることで、疑心暗鬼が広がっている。

 

昨日発表の中国GDPに続いて、本日も不動産関連の統計の公表が延期された。今週16日から開催されている共産党大会に配慮したとの見方もあるが、新たな発表日程にも触れられず、統計の信頼性を損なうような今回の措置には、市場は明らかにNoと言っている。こんなことをやっていては、市場にとってネガティブに働くばかりである。

 

ハイテク株で構成されるハンセンテック指数が大幅反落し、前日比4.19%安と下げ幅が目立った。自動車関連株が大幅安となり、EVメーカーの小鵬汽車(9868)は9.5%安、新興メーカーのNIO(9866)は6.6%安、吉利汽車(0175)は4.7%安、理想汽車(2015)は4.1%安と下げが目立った。

 

主要銘柄も全面安となり、スポーツ用品の李寧(2331)は6.4%安、バイオ医薬品開発の薬明生物技術(2269)は6.3%安、Eコマースの京東集団(9618)は5.5%安、フードデリバリーの美団(3690)は6.1%安だった。

 

一方、一部の不動産関連株が上昇し、不動産開発の中国海外発展(0688)は0.7%高で引けた。中国の民営不動産企業が、国有の債券保証会社による保証が付いた債券の起債を予定していると伝わり、資金繰り改善するとの見方が強まった。

 

中国本土株は上海総合指数は前日比1.19%安の3,044.38、CSI300指数は同1.61%安の3,776.53と続落した。中国のテコ入れ期待から朝方買われる場面もみられたが、香港市場同様に午後に入り、下げ幅を拡大し幅広い銘柄に売りが波及した。

 

為替市場では人民元が再び元安方向に進んでいることも悪材料となった。19日、人民元は1ドル=7.24元を付け、1ヵ月ぶりに対ドルベースで約14年ぶりの安値となる7.26元台まで近づいた。中国人民元や日本円の下落は著しく、市場の変動が激しくなることに警戒が必要であろう。
 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

 

 

 

 

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