●ドル円は先週、1990年8月以来のドル高・円安水準をつけ、鈴木財務相は再度の介入を示唆。
●1990年当時は、160円、155円、150円、145円という5円刻みが、ドル円相場の節目となった。
●今局面は介入警戒から50銭刻みが目安か、ただドル円相場は米物価次第の状況が当面続こう。
ドル円は先週、1990年8月以来のドル高・円安水準をつけ、鈴木財務相は再度の介入を示唆
ドル円は10月14日のニューヨーク外国為替市場において、一時1ドル=148円86銭水準に達し、1990年8月以来、32年ぶりのドル高・円安水準をつけました。同日発表された10月の米ミシガン大学消費者態度指数で、消費者の予想インフレ率が前月から上昇したことなどを受け、米連邦準備制度理事会(FRB)が大幅利上げを継続するとの見方が強まり、ドル買い・円売りに弾みがついたものと推測されます。
ドル高・円安が一段と進行したことについて、鈴木俊一財務相は10月15日、「過度な変動がある場合は、断固たる措置を取る考えにいささかも変わりはない」と述べ、再度の為替介入も辞さない姿勢を改めて示しました。ただ、外国為替市場では、為替介入への警戒感は強いものの、依然としてドル高・円安の流れが続くとみる向きが多いように思われます。そこで、以下、今後のドル円の目安となる水準について考えます。
1990年当時は、160円、155円、150円、145円という5円刻みが、ドル円相場の節目となった
まず、ドル円が前回、148円台後半をつけていた1990年を振り返ります。1990年3月1日から8月31日までの推移は図表1の通りで、ドル円は4月2日に160円15銭水準、4月17日に160円20銭をつけ、いわゆる「ダブルトップ」を形成しました。ダブルトップとは、相場の天井を示すチャートのパターンですが、ドルはこのチャート通り、対円で天井を打ち、その後はドル安・円高トレンドに転じました。
その後、5月に150円水準でドル安・円高の進行がいったん止まり、6月には155円水準まで戻ったものの、再びドル安・円高方向に切り返し、7月末には145円台をつけました。そこからもう一度、反転したものの、150円水準を明確に超えられず、結局8月には145円を割り込み、その後ドル安・円高が一段と進みました。このように当時は、160円、155円、150円、145円という5円刻みが、ドル円相場の節目となっていたように見受けられます。
今局面は介入警戒から50銭刻みが目安か、ただドル円相場は米物価次第の状況が当面続こう
次に、現在のドル円相場の状況に目を向けると、前述の通り、依然としてドル高・円安の流れが続くとの声が多く聞かれ、すでに150円は視野に入っていると思われます。ただ、今局面では、介入警戒感も強く、1990年当時のような155円、160円といった5円刻みの節目を想定することは困難と考えます。そのため148円台以降のドル円は、本邦当局の動きをにらみつつ、50銭刻みが目安となる公算が大きいとみています。
ただ、為替介入は相場のトレンド転換を目的とするものではないため、米金利先高観が続く限り、ドル高・円安の基調も続く可能性が高いと思われます。したがって、米国の物価関連の指標で、物価の伸びの鈍化が明確に確認できない限り、ドル高地合いは変わらず、物価の伸びが続く場合は、150円を超えるドル高・円安も想定されます。このような「ドル円相場は米物価次第」という状況は、当面続くのではないかと考えています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『1ドル=148円台をつけたドル円、次の目安となる「水準」は【ストラテジストが分析】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト