(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

ハンセン指数 16,701.03 pt (▲0.78%)
中国本土株指数 5,692.42 pt (▲0.65%)
レッドチップ指数 3,279.48 pt (▲1.46%)
売買代金1,128億0百万HK$(前日912億1万HK$)

国際通貨基金(IMF)は成長率の見通しを下方修正

国際通貨基金(IMF)は11日、最新の世界経済見通しを公表し、成長率は2022年に3.2%、2023年に2.7%とした。今年7月時点の予測から2022年は0.2%の下方修正で、ロシアによるウクライナ侵攻、インフレ高進、中国経済の停滞などをリスク要因として挙げた。

 

地域別では、ユーロ圏経済の成長率を前回から0.7%低く予想し、0.5%成長にとどまるとの厳しい見方である。数十年ぶりの高いインフレ率と景気後退が併存する非常に厳しい局面になると指摘した。

 

ウクライナでの戦争に起因する欧州のエネルギー危機は来年にかけても引き続き大きな打撃となる見通しで、「最悪期はこれから」と警鐘を鳴らしている。

 

中国経済についても厳しい見通しを示した。今週末に中国共産党大会を控えるが、中国共産党機関紙の人民日報は3日連続で厳格な新型コロナウイルス政策を堅持する方針を示すなど、何が政策として最重要なのかはっきりしない。

 

中国当局は「ゼロコロナ政策」の正当化と、コロナ対策の規制を緩和すれば医療体制が逼迫するとの見解を示している。足元の感染者は増加傾向にあるが、世界的にみれば感染者の絶対数は少数である。経済の足かせとなる政策に固執し、なぜ経済成長を犠牲にすることを止めないのか、疑問が残る。

 

中国に対する米国の輸出規制などが影響し香港は続落

12日の香港市場はハンセン指数は、13日の米消費者物価指数の発表を控えて市場参加者の様子見姿勢が強まるなか、5日続落となり、11年ぶりの安値を更新した。

 

バイデン米政権の対中国に対する半導体の輸出規制にはじまり、中国の新型コロナウイルス防疫措置の強化が香港市場に上場する幅広い銘柄の売り圧力に繋がっている。

 

ITネットやハイテク株で構成されるハンセンテック指数は5日続落し、連日で統計開始以来の安値を更新し続けている。マーケットはいささか中国の景気テコ入れ期待に冷ややかな視線を送り、香港株を手放す動きが続いている。米中双方の影響を受ける香港株は厳しい局面が続く。

 

ただ、午後になると一時プラス圏まで急上昇する場面もみられた。この時間に、中国本土市場でも同様に大きく株価を戻す場面がみられたが、株式相場の安定を図るため「国家隊」と呼ばれる中国政府が支援する複数のファンドが、本土株の下落を抑えようと市場で株式を買い入れたとの憶測が流れた。

 

セクターでは先月インバウンド期待で買われていた消費や飲食関連といった銘柄が売られ、宝飾販売最大手の周大福珠宝(1929)は5.1%安、火鍋チェーンの海底撈國際(6862)は4.7%安、大手カジノの金沙中国(1928)は3.8%安と下げた。

 

一方、連日大幅安となった半導体や自動車関連株に買いがみられ、半導体ファウンドリーの華虹半導体(1347)は9.3%高、自動車メーカーの理想汽車(2015)は6.8%高、小鵬汽車(9868)は4.0%高となった。

 

中国本土株市場は上海総合指数が前日比1.53%高の3,025.51、CSI300指数は1.52%高の3,784.31と続伸した。両指数は午後に入り大幅高となり、重要イベントを前に中国当局が株価を安定させる動きを取ったとの思惑が強かった。ここ数日売られたITネット株やハイテク株が買い戻される展開となった。
 

 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

 

 

 

 

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