(※写真はイメージです/PIXTA)

世界地図をのぞくと日本はロシア・中国・北朝鮮に囲まれており、現在の世界情勢を照らし合わせると、地政学上大きく危険をはらんでいる国の一つといえます。2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻による戦場の痛ましい現状の報道を目にして、罪のない人々が苦しむ姿に心痛めるとともに、自国の安全への不安を募らせれている人も多いのではないでしょうか。本連載では「2027年、日本がウクライナになる(他国に侵攻される)」と予測する、元自衛官で「戦場を知る政治家」である佐藤まさひさ氏の著書から一部一抜粋して、日本防衛の落とし穴についての知識を分かりやすく解説します。

ロシアから北方四島返還のチャンスを逃した90年代

しかし一度だけ、返還されるチャンスがありました。ボリス・エリツィン大統領の時代(1991〜1999年)です。ロシアは当時ひどい経済不況だったため、日本からの経済支援と引き換えに「北方四島の返還」を考えたのです。

 

その時に畳み込むような交渉をすればよかったのですが、ロシアの顔色を窺っているうちに日本経済は低迷。逆にロシアは天然資源で潤い、国力を回復させました。日本は好機を逸したのです。

北海道にはなぜ米軍の基地が置かれなかったのか?

米ソ冷戦――。第二次世界大戦後、世界はアメリカ合衆国を中心にした「資本主義・自由主義」の西側諸国と、ソ連を中心にした「共産主義・社会主義」の東側諸国の対立関係が生まれました。

 

「冷戦」は「直接は対決しない戦争」という意味で、それぞれが攻撃力をもつからこそ、互いに牽制けんせいし合う状態が続きました。こうしたなかで、日本の各地に米軍の基地が置かれました。

 

 

一つ不思議なのは、北海道に米軍基地がないことです。ロシアを牽制するには、北海道に米軍基地は不可欠と思えます。なぜ、それをしなかったのか?

 

ひと言で言うと、ソ連との間合いを取るためです。例えば、北海道に米軍基地を置き、ソ連軍と「顔と顔を突き合わせた状態」になったとしましょう。万が一、どちらかの手違いで「攻撃された」とみなされた場合、これに応じなければなりません。

 

つまり「小さな勘違い」が発火点になり、第三次世界大戦に発展しかねない訳です。危険を回避するには、間合いが必要なのです。

 

今回、ウクライナの件で、アメリカのバイデン大統領は「軍事介入はしない」と明言しました。言うまでもなく、軍事介入すればロシアと直接対決になってしまうからです。それは他国をも巻き込んだ「第三次世界大戦」の開始を意味します。世界中の誰もがそれを望みません。

 

しかしその一方で、世界中の多くの地域で、今回のような侵攻が起こったり、小さな紛争が絶え間なく起きたりしているのです。世界は、微妙なバランスの上に成り立っています。それぞれの国には、それぞれの事情があり、思惑がある。どこかがそれを剝むき出しにして暴走すれば、バランスは一気に崩れる。そんな危うい世界に、私たちは生きているのです。

 

佐藤まさひさ
参議院自民党国会対策委員長代行
自民党国防議員連盟 事務局長

※本連載は、佐藤まさひさ氏の著書『知らないと後悔する 日本が侵攻される日』(幻冬舎)から一部を抜粋し、再編集したものです。

知らないと後悔する 日本が侵攻される日

知らないと後悔する 日本が侵攻される日

佐藤正久(現・佐藤まさひさ)

幻冬舎

2027年、日本がウクライナになる――。決して脅しではない。習近平国家主席が4期目を決めるこの年に、世界は大きく動くことになるだろう。ロシア、中国、北朝鮮に囲まれた我が国の危険性は、日増しに高まるばかりである。ロシ…

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