地元でのコミュニティづくりも進める
さらにTさんは今、IT事業そのものではありませんが「扉の開かれた拠点づくり」に取り組んでいます。
地方都市ならではの安い家賃を利用して、以前飲食店だったところを居抜きで借り、軽食を出しながら誰もが自由に集う場所として開放しています。
「人が集まると目的が生まれる」というのがTさんの口癖です。確かに、まず集まることから仕事は生まれてくるのかもしれません。すぐふらっと集まれるのも、地方のいいところです。
そこは決まった目的のために人が集まる場所ではなくて、なんとなく居心地がいいなと感じる人が自由に使う場所だそうです。
Webのデザイナーが県内から集まって勉強会をすることもあれば、なんとなく自分の仕事場にしている人もあり、子ども連れで来て、その子が絵を描いて遊んでいるといったこともあるそうです。
今までなかった場所をつくるというのが目的なので、人によっていろいろな使い方があり、それがこの場所のユニークなキャラクターになっているようです。Tさんが学校で講演をしたのも、あるときこの場所に学校の先生が来たことがきっかけだったと聞きました。
Tさんはこんな場所をさらに増やしていきたいと考えているそうです。業界に縛られず、誰とでもつながりがもて、新しいことを生み出していくIT企業の担い手らしい取り組みだと感じます。
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ITエンジニアはどんな業界のどんな職種の人とも話ができ、一緒に今までにないものをつくりあげることができます。
地方都市には未来がないようなことが盛んにいわれていますが、TさんのようなITエンジニアがUターンしたときに、そこには地方を見直し、地方を新しくつくっていく人の輪ができあがっていくのではないかと思います。
地方の資源はモノでもカネでもなく人です。人がつながると強いんです。そしてITエンジニアは人と人をつなぐハブになれる存在です。なぜなら、100%の人が関心をもっている分野であり、技術だからです。
ITエンジニアは地方のDX(デジタルトランスフォーメーション)を可能にして、地方を再生する力をもっています。
ぜひITエンジニアとして自分の未来と地元の未来を切り拓いてください。