●米国では、CPIコア指数の動きが利上げ継続と景気悪化の思惑を強め、株安の主因となっている。
●CPIはサービスの構成比率が約57%、サービスのうち住居の構成比率が高く帰属家賃は約24%。
●帰属家賃は依然上昇傾向、今後の米インフレをみる上で帰属家賃やSticky-price CPIに注目。
米国では、CPIコア指数の動きが利上げ継続と景気悪化の思惑を強め、株安の主因となっている
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は9月21日、米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後の記者会見において、8月の消費者物価指数(CPI)の前年同月比の伸び率に触れ、幅広い商品とサービスでインフレ圧力が明白だと指摘しました。そして、物価上昇率を目標の2%に戻すことに強く注力していると述べ、しばらく利上げを継続する方針を明らかにしました。
CPIの前年同月比伸び率について、もう少し詳しくみていくと、総合指数は6月の+9.1%をピークに、ガソリン価格の低下などから、2ヵ月連続で低下しています。一方、食品とエネルギーを除くコア指数は、3月に+6.5%をつけた後、3ヵ月連続で低下しましたが、7月は6月と同じ+5.9%となり、8月は+6.3%に伸びが加速しました。このような物価の動きが、利上げ継続と景気悪化の思惑を強め、米株安の主因となっています。
CPIはサービスの構成比率が約57%、サービスのうち住居の構成比率が高く帰属家賃は約24%
そこで、今回のレポートでは、米国のCPIの中身に注目し、CPIを構成する項目のうち、どの価格が高止まりしているかを確認します。CPIは、「食品」、「エネルギー」、「食品とエネルギーを除く項目(いわゆるコア項目)」という3つの大きな項目で構成され、直近の構成比率は、順に13.5%、8.8%、77.7%となっています。これら3つの項目は、さらに細かい項目に分類されます。
コア項目は、「財」と「サービス」に分類され、財の構成比率は21.2%、サービスは56.5%となっており、CPIに占めるサービスの割合は半分以上であることが分かります。なお、サービスは、「住居」、「医療」、「輸送」などの8項目に分類され、8項目のうち構成比率が最も高いのは住居の32.2%です。住居はさらに細かく分類されますが、そのうち構成比率が最も高いのは「帰属家賃」の23.7%です。
帰属家賃は依然上昇傾向、今後の米インフレをみる上で帰属家賃やSticky-price CPIに注目
帰属家賃とは、持ち家に住んでいる人が、その家を借家とした場合に支払う想定家賃のことです。前述の通り、この帰属家賃だけで、CPI全体の23.7%を占めるため、CPIは帰属家賃の動向に大きく影響を受けることになります。帰属家賃は、いったん上昇すると、なかなか下がらない傾向があり、2021年1月以降、前年同月比、前月比ともに上昇が続いています(図表1)。
なお、米アトランタ連銀は、帰属家賃や医療など、いったん価格が上昇すると、なかなか下がらない項目からなる「粘着価格(Sticky-price)CPI」を算出し、毎月公表しています。ただ、この指数も上昇傾向にあり(図表2)、米CPI、とりわけ食品とエネルギーを除くコア指数の伸びが明確に鈍化するか否かを見極める上では、帰属家賃やSticky-price CPIの動きにも注意が必要と考えます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国のインフレが落ち着かない理由を探る【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト