加盟するフランチャイズは、何を基準に選ぶべき?
以上のように、フランチャイズをうまく活用できれば、「両利きの経営」の実現につなげることができます。しかし、わが国ではフランチャイズを直接規制する法律などはなく、残念ながら十分な能力のない本部も存在し、多くのトラブルが発生しているのも事実です。そのため、加盟するフランチャイズチェーンをどのように選ぶのかが重要になります。
まず、本部が提供する事業計画について、うのみにするのではなく、なぜそう考えることができるのか、本当にそのとおりに実現できるのか、と疑ってみることが何より重要です。これまでの会社経営の経験を生かしてシビアに判断しましょう。
そのうえで、少しでも失敗の可能性を下げたいのであれば、店舗数が多く、チェーン展開してからの年数が長いフランチャイズチェーンに加盟することが考えられます。
実際に有名企業が業種の異なる他の有名フランチャイズチェーンに加盟している例なども多くあります。しかし、この場合はしっかりとパッケージ化されている場合が多いため、経営の自由度がかなり低くなります。
また、店舗数の多さは重要な指標ではあるのですが、短期間で店舗数が大幅に増えた場合、無理が生じている、あるいは、まだ問題点が顕在化していないといったこともあるので、店舗数とチェーン展開の年数はどちらか片方だけを見るのではなく、両方を見て判断しましょう。
一方で、黎明期で店舗数が少ないフランチャイズチェーンであれば、経営の自由度が高く、出店数が少ないために好立地への出店が可能になります。しかし、この場合は、本当に事業が成功するかどうか、未知数な場合も多いため、より慎重に本部の提案する事業計画を吟味し、収益性などをしっかりと検討したうえで加盟するかどうかを判断すべきことになります。
「フランチャイズ=成功の確約」ではない、と理解する
以上のように、中小企業が「両利きの経営」を実現するために、フランチャイズへの加盟というのは一つの有効な手段といえます。
しかし、あくまでフランチャイズは成功の可能性が高いというだけで、成功が確約されたものではないことを理解しておきましょう。本部が助けてくれるから、売れる商品だからといって、必ず成功するというものでは決してありません。加盟者が真剣に事業に取り組むことが大前提です。
フランチャイズを活用した「両利きの経営」の実現
以上に述べてきたとおり、経営資源の不足という、中小企業による「両利きの経営」の実現のための大きな制約となる問題をクリアするための選択肢として、フランチャイズの活用が考えられます。
「中小企業に〈両利きの経営〉は難しい」とあきらめてしまう前に、一度、フランチャイズへの加盟という方法も検討してみてはいかがでしょうか。
松井 智
榎本・松井法律事務所
パートナー弁護士
中小企業診断士
事業承継支援コンサルティング研究会