中小企業は経営資源が少ないケースが多く、経営者は「限られた経営資源の中での探索活動(新事業の発掘)」に悩みがちです。しかし、本当は隠れた資産や強みがあるにもかかわらず、それを見逃しているだけかもしれません。自社が有する資産や強みをどのように捉えて活用するか、その手段を解説します。※本記事は『中小企業の両利きの経営』(ロギカ書房)を抜粋・大幅に再編集したものです。

自社の強みの認識&それに基づく戦略=「経営の基本」

「強みの上に築け」。ピーター・ドラッカーの至言です。

 

自社の強みに関する認識とそれに基づく戦略は、企業の大小を問わず、経営の基本となっています。経営資源に制約のある中小企業では、その重要度は特に大きいと言えるでしょう。もし、強みを正しく認識できていなかったら、探索活動は間違った方向に進みかねません。

 

ここで、ひとつの事例を紹介します(出典:「2020年版 中小企業白書」中小企業庁)。

 

有明産業(株)(京都市、従業員35名、資本金4,000万円)は、もともと酒造メーカーからの業務請負による洋樽の製造・販売を主な事業としていました。しかしながら、2004年の労働者派遣解禁に伴って、業務請負事業の売り上げがなくなり、売上高はピーク時の20億円強から、2008年度には2億円まで落ち込みました。

 

こうした中、現社長の小田原信行氏(当時専務)が、京都商工会議所主催のセミナー「知恵の経営」に参加したことが転換点となりました。中小企業診断士や経営支援員のアドバイスを得て、「洋樽は衰退産業」との認識が、「磨きあげれば1番の強みとなる」方向へ変わったのです。

 

それをきっかけとして、「洋樽は『調味料』として、お客様である酒造メーカーの製品価値を何倍にも高めることができる」と気が付くことになります。焼酎などの蒸留酒は、樽によって色や香り、フレーバーが異なるため、調味料としての機能があるのです。そこで、樽の焼き加減、材料の変更によって、調味料としての提案を行い、方向性の転換と事業の拡大を実現しました。

 

上記事例では、第三者のアドバイスを得て自社の強みを発見したことによって、探索活動の成功につなげることができたのです。自社の資産や強みについて多面的に考えること、潜在的な可能性まで含めて考えることの重要性を示唆しています。

 

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中小企業の両利きの経営〈未来を創る10の視点〉

中小企業の両利きの経営〈未来を創る10の視点〉

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