(※画像はイメージです/PIXTA)

「即時償却」は、中小企業や個人事業主が設備投資を行った場合等に一気にその額を経費化できるというものです。また、一部で「節税」の手段としても人気があります。本記事では、即時償却のメリットと、それが本当に節税の手段たりうるのか、現状あまり指摘されていない落とし穴も含め、解説します。

制度をちゃんと使っても「税務否認」されるリスクも!?

しかし、昨今、中小企業経営強化税制による即時償却をうたって機械設備を販売する業者のなかには、いずれ、それを購入した顧客が即時償却を行った場合に税務否認されることになるのではないかと危ぶまれるケースが散見されます。

 

それは、「即時償却の根拠となる『制度』の選択が誤っているケース」です。

同じ制度でも「類型」によってこんなに違う

たとえば、同じ中小企業経営強化税制でも、「A類型(生産性向上設備)」、「B類型(収益力強化設備)」、「C類型(デジタル化設備)」の4類型があり、それぞれ要件が異なります(中小企業庁「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」参照)。

 

「A類型」の場合は工業会等の証明書さえあれば即時償却をすることができます。なぜなら、既存の事業の生産性を高める目的で行う設備投資であり、かつ、最新の機械設備を導入すれば生産性が向上することが明らかだからです。

 

これに対し、「B類型」は手続が複雑で、かつ時間も数ヵ月かかります。計画書を作成して経済産業大臣の確認を受けなければなりません。なぜなら、B類型は既存の事業と異なる新規事業を行う場合を想定しているからです。

 

「A類型」と「B類型」ではハードルの高さがかなり異なるといえるのです。

税務否認が危ぶまれるケースとは?

ところが、近年、即時償却できることをアピールポイントとして機械設備を販売している事業者のなかには、たとえば、既存の事業と異なる新規事業のための設備投資であるにもかかわらず、中小企業経営強化税制の「B類型」ではなく「A類型」での即時償却を行うという説明を行っているケースがあります。

 

先述したように、「B類型」で即時償却を行うには、煩雑な手続を経ることが必要だし時間もかかります。そうであるにもかかわらず「A類型」で即時償却を行うことについては、法制度が想定していない「抜け穴」のようなものであり、制度の選択を誤っているということになります。

 

現時点ではそういう理由で税務否認を受けたケースは見当たりません。しかし、今後、税務当局に問題視され網がかかる可能性がありますので、注意が必要です。

 

このように、即時償却を活用しようとする場合は、どの制度を根拠として、どのような理屈で認められるのか、確認しなければなりません。

 

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