即時償却とは?
即時償却とは、機械設備等の購入代金額の全額について、一気にその年度の必要経費に算入できることをさします。
本来はその資産の「法定耐用年数」に応じて複数年に分けて「減価償却費」として経費計上していく決まりになっていますが、即時償却は、法令で定められた特別な例外として認められるものです。
典型的なのは以下のようなケースです。
・工場の生産性を向上させるために新しい機械を導入する
・新規事業を立ち上げるのに際して機械設備を購入する
特によく活用されているのが、中小企業経営強化税制「A類型(生産性向上設備)」に基づく即時償却です。
これは、自社が行っている事業の生産性を向上させるため、所定の要件をみたす機械設備を新規導入した場合に、その機械設備の購入金額について以下のいずれかの税制優遇措置を受けられるというものです(国税庁HP「タックスアンサーNo.5434 中小企業経営強化税制」参照)。
・即時償却
・初年度における購入代金額の10%の「税額控除」(資本金3,000万円~1億円の企業は7%)
「A類型」の場合、この特典を受けられる条件はシンプルで、工業会等の証明書が発行されている最新モデルの機械設備を購入すればよいことになっています。
したがって、機械設備のリニューアルや新規購入を行う際は、メーカーや販売元に確認して、その機械設備について工業会等の証明書が出ているものを選ぶことをおすすめします。
「節税」以上のメリットがある
即時償却について「節税になる」という表現を見かけることがありますが、厳密にいえばこれは誤りです。
というのも、即時償却は、本来ならば複数年に分けて減価償却費を計上すべきところを、一気に計上するものだからです。
複数年に分けて計上しても、初年度に一気に計上しても、減価償却費の金額自体はまったく同じです。
「節税」という言葉の定義をどうとらえるかにもよりますが、税金のトータルの額を減らすことができるという意味では、むしろ、初年度の税額から10%の控除を受けられる税額控除を選ぶほうがメリットが大きいといえます。
しかし、それでも、実際には、即時償却を選ぶケースが非常に多くなっています。
それはなぜかというと、即時償却によって一気に大きな経費を計上すれば、そこにかかるはずの税金を払わなくて済むため、その分だけ当座の事業資金を確保することにつながるからです。
特に、昨今のコロナショックのような深刻なアクシデントが何の前触れもなく起きることがあります。そういう場合に、手持ちのキャッシュが潤沢であれば、いろいろな手を打つことができます。
先行き不透明な現在、即時償却は有効な選択肢だといえます。
即時償却のしくみを活用した人気の「節税商品」
近年、即時償却によって多額の経費を計上できる点に着目した商品が、一部で「節税商品」といわれ人気を集めています。
たとえば、以下のようなものが挙げられます。
・自家消費型の太陽光発電設備(中小企業経営強化税制「A類型」(生産性強化設備))
・コインランドリー(中小企業経営強化税制「B類型」(収益力強化設備))
・暗号資産のマイニングマシン(中小企業経営強化税制「B類型」(収益力強化設備))
・全量売電型の太陽光発電設備(ふくしま産業復興投資促進特区の税制優遇措置)
先述したように、即時償却は、「節税」といえるかどうかは別として、手持ちのキャッシュを豊富に保てるという意味で、メリットが大きいものです。
ただし、これらに投資する場合は、以下の2点についてきちんと考える必要があります。
・税務否認のリスクはないか
・投下資本を回収できるか
このうち、税務否認のリスクについては、即時償却は法令の根拠に基づくものである以上、問題とならないケースが大半だと考えられます。
実際に、上に挙げた4つについては、いずれも根拠となる制度について合理的な説明が可能です。
すなわち、「自家消費用太陽光発電設備」は発電した電力を自社の工場や機械設備の稼働に利用することで既存の事業の生産性向上に役立つので、「A類型」にあたることは疑いがありません。
また、コインランドリー、暗号資産のマイニングマシンは、既存の事業と異なる新規の収益事業として行うことが多いので「B類型」にあたります。
福島の「全量売電型の太陽光発電設備」は、福島の復興のために投資を促進する制度の一環です。
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