「成功するまで続けること」は記憶にも当てはまる
皆さんは、一代で松下電器産業(現パナソニック)を築き上げた伝説の経営者である松下幸之助氏のことはご存知かと思います。松下幸之助氏は、こんな言葉を残しています。
「世の中はつねに変化し、流動しているものである。ひとたびは失敗し、志を得なくても、それにめげず、辛抱強く地道な努力を重ねていくうちに、周囲の情勢が有利に転換して、新たな道がひらけてくるということもあろう。世にいう失敗の多くは、成功するまでに諦めてしまうところに原因があるように思われる。」
要するに、成功の秘訣は、何といっても成功するまで続けることだと語っているのです。松下幸之助氏以外にも同様の意味のことをいっている成功者たちは、国内国外問わずに結構います。
しかし、確かにそれはそうなのだろうと頭ではわかっているけれど、実際に物事を継続していくというのはなかなかに困難であるのも事実です。おもしろいのは、途中であきらめずにコツコツ続けるという考え方自体が、実は脳の記憶や学習の性質に当てはまるということです。
「学習曲線」というものがあります。これは、横軸を学習量とし、縦軸を成績(成果)としたグラフです。理想的には、学習量に比例して成績も直線的に伸びてくれればいいのですが、残念ながらそういうことにはなりません。学習量に対する成績の上がり方は、「累乗の効果」といって下図のような曲線となります。
この形のどこが問題かというと、初期の曲線の形状にあります。最初のうちは学習量に対してほんのわずかしか成績が上がっていきません。
一生懸命勉強をしているのに、なかなか成果が出ないときのことを想像してみてください。自分の勉強の仕方が悪いのか、中には、自分には才能がないのかなどと考えてしまう方もいるかもしれません。しかし実は、誰もが学習の初期には、成果は遅々として上がらないものなのです。
この事実を知っているか知らないかは大きな違いです。これを知らないと、本当は実力が付いているのにも関わらず、実感がないため途中で心が折れてしまうかもしれません。しかし、この事実を知っている人はコツコツと勉強を続けていくことができ、ある時期を境に爆発的に成績が上がるというわけです。
そして、学習の性質が学習曲線のようになる理由の1つに、記憶の性質も同じ形をとることがあるのです。それを「レミニセンス現象」といいます。記憶とは、頭に入れた当初よりも時間が経ってからのほうが高度化するというものです。それでは、記憶の高度化とは何でしょうか。
例えば、皆さんが何か新しくスポーツを始めたとします。最初のうちは、あるテクニックについてしくみや動き方は理解できていても、スムーズにこなすことはできません。しかし、しばらく練習しているうちに、突然できるようになるときがやってきます。子どもの頃、自転車に初めて1人で乗れた瞬間もこれと同じですね。
また、学生の頃、その瞬間にはわからなかった授業の内容が、しばらく時間が経過した後に、「ああ、こういうことだったのか」と理解でき、目から鱗が落ちるような経験をした方もいるでしょう。これはつまり、頭に入ったばかりの記憶というものは、ポツンとひとりぼっちの状態なので、あまり力が発揮できないのです。しかし、時間の経過とともに、すでに頭の中にいた他の記憶たちと仲間になって一緒に協力し合えるので、力が増すのです。つまり、使える記憶に変身することができるということになります。
「記憶」「記憶も含めた学習」「成功」これらは皆、相似形というわけです。何事においても、コツコツ継続することが最強のメソッドであることがおわかりでしょう。
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