(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

ハンセン指数 17,165.87 pt (▲0.49%)
中国本土株指数 5,912.25 pt (▲0.78%)
レッドチップ指数 3,319.65 pt (▲1.72%)
売買代金916億8百万HK$(前日1,087億5万HK$)

英トラス政権の政策を受けて英ポンドと英国債が急落

英国の危機ともいえる状況を受けて、28日に、英イングランド銀行BOEは満期償還まで20年以上の超長期国債を市場から買い入れる緊急措置を発表した。英トラス政権の財政政策を受けて、財政悪化への懸念から英ポンドと英国債は急落し、混乱していた市場を安定化させるべく導入された施策は、購入金額にして約650億ポンド(694億ドル)に上るとみられる。

 

この措置を受けて欧米市場は、欧州通貨、債券、株式とも全面高となった。これに引っ張られる形で、米国株式相場や債券相場も反転し、7営業日ぶりに前日比上昇して取引を終えた。

 

ただ、市場の警戒はなお高く、相場が安定したとは言い難い。29日、トラス英首相は自身の財政パッケージを擁護し、厳しい経済環境に対応が必要だと述べた。しかし、この発言後、ポンドと英国債は再び反落、市場の混乱はさらに深まり、金融危機にも似た状態に懸念は高まっている。

 

英イングランド銀行は、今年に入ってインフレ抑制のために金融引締めを続けてきたが、危機的な状況を前に、一時的に金融緩和せざるをえない異例の事態に追い込まれた。英国内で政策の整合性が取れず、混乱していることは明らかである。

 

加えて、欧州ではエネルギー危機の可能性も高まっており、インフレの進行を止められないのではないかとの警戒感が強まっている。英国金融市場の混乱は、世界に波及しており、厳しい状況が続くと思われる。

ポンド安を引き金に、香港市場は11年ぶりの安値

前夜の米国株式の反発にもかかわらず、29日の香港市場は続落となった。ハンセン指数は前日比0.49%安と終値ベースでは2011年10月4日以来、11年ぶりの安値を更新した。

 

同指数は朝方、高く寄りついたが、後場に入ると急落し、マイナス圏に沈んだ。英國ショックによるポンド安を引き金に、時間外で米指数先物が大きく下げたことも地合いを悪くした。

 

中国の不動産開発会社の旭輝控股集団(0884)が債務不履行を起こしたと伝わり、中国不動産業者を巡る債務危機懸念も再燃した。同社株は前日比16.2%下げる大幅安で引けた。

 

同社は上海を拠点とする中国で8位の不動産開発会社で、比較的健全とみられていたが、流動性危機に陥ったことで、問題の根深さが露わとなった。

 

不動産株で構成されるハンセン本土不動産指数は前日比4.77%安と大きく指数を押し下げた。同業の碧桂園(2007)は同11.6%安、不動産開発の龍湖集團(0960)は同7.5%安、不動産管理サービスの碧桂園服務(6098)は同7.1%安と大きく下げた。

 

中国IT株も軟調となり、ハイテク株で構成されるハンセンテック指数は前日比1.24%安と他指数をアンダーパフォーム。今年3月15日に付けた指数設定来の最安値まで、わずか10ptにまで迫った。ソフトウエア開発の明源雲集団(0909)は15.3%安、PC大手のレノボ(0992)は7.1%安、人工知能開発のセンスタイム(0020)は5.7%安と下げた。

 

中国本土株市場は上海総合指数は約4ヵ月ぶりの安値を叩く売りは手控えられ、下値は底堅い動きから、前日比0.13%安と小幅安にとどまった。CSI300指数は同0.04%安の3,827.14と同意は薄かった。来週からの国慶節の大型連休を前に、安値を売り叩くことも手控えられたようである。

 

為替では、人民銀行のレートチェックや一部大手行に人民元の空売りを控えるよう指導したと伝わって、人民元の下げには歯止めがかかった。明日発表される9月の製造業PMIは景気動向を占ううえで注目が集まる。

 

 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

 

 

 

 

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