今回は、マンション所有者にのしかかる「管理費」という負担について見ていきます。※本連載は、須藤桂一氏の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』(保険毎日新聞社)の中から一部を抜粋し、マンション管理に様々な問題を抱える、いわゆる「ブラックマンション」の概要と、ブラック化の回避方法を見ていきます。

年間数十万円払っても「専有部分」は管理の範囲外!?

マンション管理は、マンションを購入すると自動的についてくるもので、「自分には不要だ」とか、「管理なんてそんなものはいらない」ということができません。また、その管理の形態や業者は、新築も中古も関係なく事前に設定されていて、ユーザー(区分所有者)側に選択の権限はありません。

 

仮に、管理費が月額2万円のマンションがあるとしましょう。年間で24万円の管理費を払っていることになります。さらに、修繕積立金が月額1万円だとすると、管理費と修繕積立金の合計で月額3万円、年間で36万円の支払いとなります。

 

10年間で360万円、クルマを1台購入できるほどのコストです。その1戸当たり年間36万円という金額で、管理会社はどこをどのように管理してくれるのかといえば、たとえば共用部分である玄関前の掃除はしてくれるでしょうが、専有部分である家の中まではやってくれません。

 

専有部分でやってくれることは、雑配水管の洗浄と消防点検程度です。あとは、管理員さんを置いてくれたり、エレベータやポンプの保守といった共用部分の保守業務というところです。

 

これらのことに、1戸当たり年間数十万円ものコストがかかっている、という認識ができていないのがマンション管理というものなのです。

ユーザーはマンション管理会社を選べない・・・

一般的に、たとえば野菜を買うときには、産地や鮮度を見ながら、手にとって納得のいくものを買うことでしょう。パソコンやクルマなどを買うなら、カタログに穴が開くほど何度も見て、じっくり検討を重ねてから購入するのではないでしょうか。

 

高額なマンションならなおさらです。「3つのP」(Place=立地、Price=価格、Plan=間取り)と希望する諸条件で候補物件を選び、最善の物件を購入すべく吟味に吟味を重ねるでしょう。

 

ところが、マンション管理については、そうやって選び抜いて購入した物件に自動的についてくるうえ、日の当たらない地道な業務でもあるので、特に購入時にはそこまで意識は向きません。

 

そして、購入後も家具や照明器具、エアコンといった生活用品の購入、引っ越しの手配、転出・転入届や子どもの学校の諸手続きなど、煩雑なことが目白押しで、マンション管理にまで気が回らないまま時間が経過していく――というのが実態ではないでしょうか。

 

特に、管理費や修繕積立金などのマンション管理にかかわる費用は、たいていは金融機関の口座からの自動引き落としで管理組合の口座へ入金されますので、税金や水道光熱費のような感覚で支払われています。

 

そんな観点で見てみると、マンション管理は「購入する」という概念がなく、吟味する余地もなく「ついてくるもの」というレベルにすぎません。10年間でクルマを1台購入できるほどの金額を支払っているにもかかわらずです。

 

また、たとえマンション管理や管理組合の活動などに目覚めたとしても、管理会社を自由に選べるわけでもなく、一般には管理会社によるサービスの比較も困難ですので、現在マンション管理を委託している管理会社から、「適切なサービスを適切な価格で買っているか」という点が、ユーザー側にはわかりにくいという特徴もあります。

 

時折、「管理会社は変更してもいいのですか?」とか、「管理委託費の削減をお願いすると、管理会社が気分を悪くしませんか?」などという質問が寄せられます。これではどちらが「お客様」なのかわからない状態です。サプライヤー(供給者)である管理会社にとって、これほどありがたい話はなく、こんなことは他の業界では考えられないでしょう。

本連載は、2015年4月21日刊行の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

須藤 桂一

保険毎日新聞社

金融破綻、年金破綻、そしてマンション破綻、著者はこの3つを「日本の三大破綻」と位置付けている。高すぎる管理費が修繕積立金を圧迫するなか、人口が減少していくニッポンで地方のマンションは資産価値を保ち続けることがで…

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