アメリカの高額な医療制度が生み出した「サプリ市場」
サプリメントは、アメリカにおいて1910年代にビタミンが発見されてから、薬ではなく自己の健康管理のための栄養補助食品として注目されました。なぜなら、アメリカの保険制度は、自分の健康は自分で守る任意保険なので、高額な出費につながるからです。
一方、1990年代に日本においても、成人習慣病の予防医学の一環としてサプリメントが推奨され、「サプリ」として大衆に広く受け入れられ現在に至っています。
栄養障害がない人への過度な栄養補給は、むしろ害に?
しかし、2013年にアメリカの研究者らによって、栄養不足のない人にとっては、ビタミンやミネラルのサプリメントは慢性疾患の予防や死亡リスクの低減に効果はなく、ビタミン・ミネラルの一部は特定の疾患リスクを高める可能性があると報告されました。
また、2022年には、ハーバード大学医学部の見解でも、マルチビタミンサプリメントを服用しても一般に健康上の利点はないと報告されています。
つまり、この結果は冷静に考えれば至極当然であり、栄養障害がない人に過度な栄養補給はむしろ害になる危険性があるわけです。
慢性膝関節疾患へ有効性は「実証されていない」
さらに、サプリメントは慢性膝関節疾患などの補助食品として拡大解釈され、一大産業になっているようです。そこで、私のクリニックを受診した患者様からもよく「飲むヒアルロン酸は効果がありますか?」あるいは「サプリメントを飲んで、軟骨は本当に修復されますか?」と質問されます。その時の整形外科医としての私の答えは以下の通りです。
「いずれのサプリメントも有効性は実証されていません」
「これまでの経口ヒアルロン酸は、腸からの吸収可能な分子量の約10倍以上もあるため吸収されず、通常は便として大半が排泄されます。しかし、近年では10万以下の低分子量のヒアルロン酸が開発されましたので、機能性食品と表示されたものは吸収されますが、まだ薬としては認可されていません。なぜなら、ヒアルロン酸はブドウ糖とアミノ酸に分解されるからです。従って、現在有効な手段はヒアルロン酸の関節内注射のみです」
「関節軟骨の構成素材(グルコサミン、プロテオグリカン、コンドロイチン等)は修復に有用ですが、膝軟骨には血行がないため(だから膝軟骨は白いのです)、軟骨に届けられません。従って、薬としては認可されていません」
しかし、薬でもないのにサプリメントで関節痛がよくなったという方もいらっしゃいます。なぜでしょう?