今後の方向性は?「令和4年度税制大綱」から読み解く
このように、暦年贈与の代替手段として考えられる相続時精算課税制度は、実際にはごく一部のケースにしか役立たず、使い勝手もいまいちです。
したがって、たとえば、暦年贈与を廃止し、相続時精算課税に一本化するというのは、現状では制度設計として問題がありそうです。
そもそも、暦年贈与の廃止案も含む「相続税と贈与税の一体化」とはどういう問題意識に基づく議論で、何をめざすものなのでしょうか。
与党(自民党・公明党)の「令和4年(2022年)度税制改正大綱」P.10~11にその提言が記載されています。
提言は以下の3段階となっています。
1.資産が高齢世代に偏在している旨の指摘
2.現行の制度では問題を解決できない旨の指摘
3.将来における相続・生前贈与に関する税制の今後の方向性
それぞれについて、ポイントをまとめます。
第1段階:資産が高齢世代に偏在している旨の指摘
まず、以下の問題点が指摘されています。
・高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏っている
・相続のタイミングも遅くなっているので、高齢世代から若年世代への資産移転が進みにくくなっている
・若年世代への資産移転を促進すれば、その有効活用を通じた経済の活性化が期待される
第2段階:現行の制度では問題を解決できない旨の指摘
そのうえで、現行の制度が上記の問題を解決する機能を失っていることが指摘されています。
・贈与税は、「相続税逃れ」を防止する観点から税率が高く設定されている
・このため、富裕層以外の人にとっては、生前贈与をためらっている面がある
・一方で、富裕層にとっては、財産の分割贈与(暦年贈与など)をすることにより、相続税の負担を回避しながら多額の財産を移転することが可能となっている
すなわち、現行の税制は、生前贈与に高い税率をかけつつ、一定のケースを非課税とする制度設計になっています。
これは、資産を若年層に移転するうえで、富裕層にとって非常に有利になっており、逆に、それ以外の人にとってはメリットが乏しいものとなっていると指摘しています。
第3段階:将来における相続・生前贈与に関する税制の今後の方向性
最後に、上記の指摘を受けて、以下のように、解決の方向性が示されています。
・諸外国の制度を参考に、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する方向性にシフトすることが望ましい
・現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、資産移転時期の違いによって不公平が生じない税制の構築に向けて、本格的な検討を進める
・現行の贈与税の非課税措置は、格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある
すなわち、「相続税と贈与税の一体化」の議論の目的は、富裕層とそれ以外の人との「格差の固定化」を防ぎ、資産を若年世代に移転する時期の違いによる不公平をなくすことにあります。
「暦年贈与の廃止」という言葉が一人歩きしている印象がありますが、あくまでも例示にすぎません。
また、同時に、現行の贈与税の非課税措置にも問題があると記載されています。
つまり、問題視されているのは、暦年贈与だけではないということです。
相続時精算課税制度についても、現行のままだと、「格差の固定化」「資産移転時期の違いによる不公平」を促しかねないという問題があります。
どういうことかというと、上述のように、相続時精算課税制度が機能するのは、贈与の対象となる資産が、将来値上がりすることが確実に見込まれるか、あるいはその可能性が高いケースに限られます。
一般に、不動産や株式など、将来値上がりする可能性がある資産は、富裕層ほどたくさん持っています。したがって、結果的に富裕層を優遇することになる可能性があります。
結局、暦年贈与の廃止だけでなく、税制全般が問題となっているということです。
しかも、「税制改正大綱」を出した与党は、富裕層や高齢世代を大きな支持基盤としており、現行制度に大きな変更を加えようとすれば、それらの人々の強い反発も予想されます。
そうだとすると、一部でいわれているような「暦年贈与の廃止」ということのみを直ちに断行することは考えにくいといえます。
とはいえ、「税制改正大綱」で提起されたように、「格差の固定化」「資産移転時期の違いによる不公平」という問題が存在し、是正していかなければならないというのは、否定しようのない事実です。
したがって、今後、どのような形であれ、相続税・贈与税の制度設計全般が大きな見直しを迫られることになることは間違いありません。
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