「離婚することが決まりまして…」苦悩する課長
オダテル不動産との解約後、いくつか不動産屋さんを回ってみたものの、しっくり来るところとは出合えませんでした。不動産売却の目処が立たないまま、時間だけが過ぎていきました。私(アサミ)としては、いまだに実家を売ることに前向きにはなれないのですが、兄から急かされている手前、嫌でも進めていかないといけません。
もしこのまま売却がうまくいかず、しまいには兄に「出て行け」と言われてしまったら、実家を手放すことはもちろん、父母の遺してくれたものをいっさい受け継げないということも考えられます。そうならないためにも、どうにか現状打破の一策を見つけたいところなのですが、仕事に追われる日々がしばらく続いているのでした。
* * * * *
アサミ:はぁ……。(家のことで頭がいっぱいで、仕事が思うように進まないな……)
オガタ課長:ミツウラさん、ちょっと話があるんですけど、こっちへ来ていただいてもよろしいですか。
アサミ:あっ、はいっ!(オガタ課長に呼ばれちゃった……。仕事へのモチベーションが下がってるの、バレちゃったかしら。オガタ課長、普段は物腰柔らかな人だけど、怒ると怖そう……)話ってなんですか?
オガタ課長:ミツウラさん、最近あなた……。
アサミ:はいっ……。
オガタ課長:実家を売ろうとしているそうですね。
アサミ:はい?
オガタ課長:いえ実は、先日オフィスで話しているのが聞こえてしまいまして。申し訳ないと思ったんですけどね。不動産屋、信用できないところが多くて困っているとかって。
アサミ:ええ。そうですけど…‥?
オガタ課長:実は、私も今家を売ろうと思っていまして。
アサミ:え、なぜ……あっ!
オガタ課長:そう、最近私離婚することが決まりまして。妻とペアローンで買った家を、売ろうと思っているところだったんですよ。
アサミ:なんと言うか、その、課長も大変ですね……。
オガタ課長:実を言うと今もあまり仕事が手につかないくらいで。いや、ここだけの話ですよ。離婚の手続きもいろいろ煩雑で、参ってしまっています。
アサミ:お察しします……。
オガタ課長:それで少し相談といいますか、情報交換をしたいと思いまして。その後、どこかいい不動産屋さんは見つけられましたか?
アサミ:いやー実はかくかくしかじかで……。
オガタ課長:ミツウラさんもやはり苦労していましたか。家を売るって本当に骨が折れますよね。
アサミ:本当に。
オガタ課長:私も仕事が忙しくてなかなかいい不動産屋を見つけられず、途方に暮れていて。それで先日たまたま、離婚の相談をしている知り合いの弁護士さんにも打ち明けてみたんです。そうしましたらですね、その弁護士さんから「不動産の仲介業者さんではなく、不動産鑑定士さんとか税理士さんとか、その道の専門家に尋ねてみてはどうか」というアドバイスをもらいまして。
アサミ:……と言いますと?
オガタ課長:私も、不動産を売るならまず仲介業者とすっかり思い込んでいたんですが、なにもわざわざ仲介業者を挟まなくても売ることができるんですよね、家ってのは。極端な話、自分で買主さんを見つけて、あとは両者の間で契約とか手続きをしてくれる専門家の人がいれば、売買は成立するわけでして。
アサミ:ははあ。確かにそうですね。
オガタ課長:ですから弁護士さんの言うとおり、ちょっと不動産関連に強い士業の会社さんをあたってみようと思っていまして。
アサミ:考えもしませんでした。私も専門家さんを訪ねてみようかしら。
オガタ課長:妻との離婚が成立するまでに、不動産も決着をつけたいですからね。もし何かいいところが見つかったら、また教えてください。