相続に伴う「税」に関するよくある失敗事例
ストーリーは相続で引き継いだ不動産を売るための必要最低限の手続きを中心に展開しています。
しかし実際の相続では、不動産だけでなく預金や有価証券といった、そのほかの金融資産との兼ね合いも考慮しながら、適切な相続手続きを行わなければいけません。相続のケースによっては実家以外に収益物件をもっていることもあるでしょう。
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アサミ:相続した資産がたくさんあると相続税の節税対策も意識しないといけないわね。
家の精:相続税の申告期限は基本的に被相続人が死亡したことを知った日から10カ月。ちなみに基礎控除(2022年現在、3000万円+600万円×法定相続人数)の範囲内であれば、課税の対象にはならないぞ。
アサミ:私の場合は相続人が兄さんと私の二人だから、相続した資産の合計が4200万円以内なら、相続税の負担はないのね。
家の精:これから説明する特例なんかを使えば、相続した資産の評価額を減らすこともできる。つまりちゃんと事前に知識や専門家の協力を得られれば、課税額を減らすことができるってわけだ。
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税金絡みの手続きというのは非常に面倒で、つい後回しにしてしまいがちです。
しかし後回しにし続けると、いざ相続税申告というときに「もっと早く対処していれば」と絶句してしまうような、思わぬ納税額が判明することも少なくありません。
そこで、相続に伴う納税について、よくある失敗事例を交えながら、想定外の出費を避け上手な節税を実現するポイントについて解説します。
失敗事例1 特例適用ができず相続税をたくさん払うことに
両親が亡くなり、財産を引き継ぐことになった二人の兄弟。相続した財産は、都内にある自宅(土地付き建物)と預金、そして有価証券等の金融資産である。住宅ローンなどの債務はほぼなしで、自宅には兄が親と住んでいた。
兄と弟がすべて半分ずつ相続することで遺産分割が確定し、自宅も兄弟の共有名義となった。
その後、相続税申告の手続きを行ったところ、兄弟で負担額に大きな差が生じてしまった。
兄は自宅に住み続けていたため「小規模宅地等の特例」を適用することができ、相続した土地の評価額を減らして申告することができた。一方の弟は別の場所に住んでいるため、弟の引き継いだ土地部分は特例が適用されず、兄よりも多額の相続税を納付することになってしまった。
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アサミ:「小規模宅地等の特例」が適用されるかされないかで、相続税の納税額に大きな差ができちゃうのね。
家の精:相続税がらみで最も有名な特例の一つだな。適用されれば相続した土地の評価額を50から80%も減らすことができて、納税額が減ることになるぞ。今回は相続した自宅に住んでいた兄は適用の恩恵を受けることができたんだ。特例が適用されるケースはほかにもあるから、まあ税理士などの専門家に聞いてみるのが吉だな。
アサミ:このケースだと、弟さんはどうあがいても特例が受けられないのかしら?
家の精:特例は受けられないが、そもそもの「相続の仕方」を変えていればよかったんだ。
アサミ:というと?
家の精:この場合なら土地建物はすべて兄が相続して、弟の分はほかの財産で代償すべきだったってことだ。これなら土地建物はすべて特例適用されて、相続税を節約できた。
アサミ:なるほど。不動産以外にも金融資産を相続していて確実に相続税がかかるときは、この点に注意しないといけないわね。
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