世界で初めて法定通貨を暗号資産にしたエルサルバドル。過渡期を迎えた国際金融の現在を専門家が解説

大量コピーが可能なネットの世界に一石を投じるNFT

山本　（中略）そもそもNFTとは何か、ということから始めていきましょうか。

ジェリー　英語では「Non-Fungible Token」。略してNFTですね。「トークン」と呼びますが、簡単に言えば、代替不可能な唯一無二（＊5）のものであることを証明するデジタル書類のようなものでしょうか。

例えば、私がブロックチェーン上で、ある画像を持っているとすれば、他の人はその画像を持つことができないということです。

実世界に例えると、モナリザはいろんな複製版がありますが、本当のモナリザはパリのルーブル美術館が所蔵するたった一つしかないわけです。当然、本物は価値が高く、代替不可能です。

これまでインターネットでは音楽でも動画でも絵でもファイル形式で無限にコピーすることができ、希少性の概念が薄くなりました。

なんでもコピーできることで、コンテンツのマネタイズが難しいということもありました。それがNFTの隆盛によって、希少性を取り戻し始めているのです。

山本　NFTの技術の土台には何があるのかといえば、ブロックチェーンですね。ブロックチェーン技術があることで、そのデータを識別できます。暗号資産と同じようにブロックチェーン技術を用いて管理することで、偽造や改ざんなどができないということです。

NFTやビットコインの背景にはブロックチェーンがある。ビットコインがなかったら、ブロックチェーンもこの速度で広がらなかったし、NFTもこのタイミングで世に出てこなかった、ということですよね。

ジェリー　当初、ビットコインでできることは送金だけでした。そして、イーサリアムは「ワールドコンピューター」という誰でも使えるコンピューター（＊6）という思想で、通貨としてはもちろん、コンテンツを保存したり身分を証明したりゲームで遊んだりといった役割まで、ブロックチェーン上でなんでも任意のプログラムを実行できるようになりました。

単なる便利なお金ができるというだけでなく、生活の様々なシーンに影響を与える革命になっていくと思います。

*5　同じコンテンツ（例えば画像や楽曲）から複数のNFTを作ることもできます。例えば、ある音楽シングルのNFTを1000個作ることができます。でも、同じコンテンツでもNFTごとにIDが違うので、区別できます。例えば、有名人が所有したことのあるNFTだったら、同じコンテンツで違うIDのNFTより価値が高くなる可能性もあります。

*6　世界各地にあるコンピューターがネットワークに参加し、計算力を提供する。世界の誰でも、報酬（暗号資産）さえ支払えば、その計算力を使い、任意のロジックの計算（商売のための計算やゲームのための計算）ができます。