(※写真はイメージです/PIXTA)

アメリカの18~29歳の男性の43%が暗号資産を利用したことがある、という調査結果が出ています。暗号資産に関して何かしら耳にしたことがあるという人は、アメリカの成人男性の8割を超えています。今まさに、1980~1990年代におとずれたインターネット黎明期のように、暗号資産とそれを下支えするブロックチェーンが黎明期を迎えています。Google Japanなどを経て、現在はプロ野球のパ・リーグをデジタル技術等で支援するパシフィックリーグマーケティング株式会社のテクノロジーアドバイザーを務める山本康正氏と、バークレイズ・キャピタル証券、Google Japanなどを経て、データサイエンティストとして活躍するジェリー・チー氏が、ソクラテス式対話のように問いと答えを繰り返しながら現代経済への認識を深めていく著書『お金の未来』(講談社現代新書)で解説しています。

中国は禁止、インドは共存。欧州は推進の傾向

山本 個人が力を持つというのは良いことのように思いますが、世界中を見てみるとその動きは一面的ではありません。

 

アメリカ政府は経済制裁の一つの手段であるドルでの制裁を回避されることを避けたいということもあり、自国のドルの強さを自ら揺るがすことには慎重で、暗号資産に部分的に賛成、中国は禁止、インドは一時、禁止になるのではないかという動きが見られました。

 

また、スイスやポルトガルの政府は、妨げるような法規制をできるだけ減らし、暗号資産業界を積極的に促進するような動きをしています。国際情勢を考えたら中国は極めて中央集権型の国家で、インドは金融の制度が未発達、そこにWeb3を放り込むと危険だということが禁止している一因なのでしょうね。

 

ジェリー やはりWeb3、暗号資産、ブロックチェーンは政府から見たらどのようなリスクがどれくらい大きいのか予測するのが難しいのです。中央集権を重視する国ほど、自分たちの権力を個人に移譲することになるのを恐れているのでしょう。

 

だから保守的なやり方で禁止すれば安全だというスタンスなのだと思います。

 

中国は独裁体制なので特別ですが、民主主義の国でもリスクを恐れています。インドでは2021年11月に暗号資産を禁止する法案を提出するといった話がありましたが、2022年2月に暗号資産への課税とCBDC(中央銀行デジタル通貨)発行の計画を発表し、財務次官が違法ではないという見解を示しました。

 

山本 共存の道を選びつつあるということですね。

ビットコインを法定通貨にしたエルサルバドル

山本 2021年9月に世界で初めてビットコインを法定通貨にしたエルサルバドルのような国もありますね。日本で例えるなら、円と同じようにビットコインを使う世界になったというようなことです。

 

現状、米ドルとビットコインを併用しているという異例の体制ですが、エルサルバドル政府は公式のビットコインウォレット(ビットコインを保管する電子財布)を設けて、登録者には30ドル相当のビットコインを配付したり、お店などでビットコインでの支払いができるスマホアプリや米ドル紙幣とビットコインを両替できるATMを導入したりして、ビットコインの利用を推進してきました。

 

エルサルバドルは、世界のどの国よりも先に大胆な動きを見せたわけですが、そこには理由がありますね。

 

ジェリー この背景としては、多くの先進国と違って、エルサルバドル国民の多くが銀行システムに含まれておらず、銀行口座自体の普及率が低いことや海外からの送金が多くてその手数料が高いこと、そもそも自国の通貨がなく主権を持たない米ドルを使わざるを得なかったことなど、複合的な理由があります。

 

山本 銀行口座を持たずに暮らす世界──そうなると、銀行の支店や口座を整備するよりビットコインを法定通貨にしたほうが早くて便利だということですね。エルサルバドルと同じような状況にある新興国では、こうした動きが見られるようになるのかもしれませんね。

次ページ中南米やアフリカで仮想通貨を法定通貨にする流れが

本連載は、山本康正氏、ジェリー・チー氏の共著『お金の未来』(講談社現代新書)から一部を抜粋し、再構成したものです。

お金の未来

お金の未来

山本 康正 ジェリー・チー

講談社

いまお金とは何か? 暮らしや国家、銀行は一体どう変わるのか? 激変するお金と新しい世界――ビットコイン、ブロックチェーン、NFT、Web3…お金とテクノロジーのプロが語り尽くす〈一番わかりやすいお金の入門書〉 「…

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