アメリカの18~29歳の男性の43%が暗号資産を利用したことがある、という調査結果が出ています。暗号資産に関して何かしら耳にしたことがあるという人は、アメリカの成人男性の8割を超えています。今まさに、1980~1990年代におとずれたインターネット黎明期のように、暗号資産とそれを下支えするブロックチェーンが黎明期を迎えています。Google Japanなどを経て、現在はプロ野球のパ・リーグをデジタル技術等で支援するパシフィックリーグマーケティング株式会社のテクノロジーアドバイザーを務める山本康正氏と、バークレイズ・キャピタル証券、Google Japanなどを経て、データサイエンティストとして活躍するジェリー・チー氏が、ソクラテス式対話のように問いと答えを繰り返しながら現代経済への認識を深めていく著書『お金の未来』(講談社現代新書)で解説しています。
現在のWeb2から、Web3の時代へ
山本 ブロックチェーン技術の盛り上がりを受けて、最近ではWeb3(ウェブスリー)という言葉が話題になることが増えましたね。
一つひとつ提唱者が違うので、「次はこれが4.0」だと自分が投資をしているもので提唱したもの勝ちのマーケティング活動の要素も強いですが、Web1.0、Web2.0、Web3、それぞれどういうものなのでしょうか。
そして、なぜ今Web3を耳にする機会が増えているのか。それらのことから簡単に整理していきましょう。
ジェリー Web1.0は文字、写真、リンクがあるような普通の静的Webページしかない時代です。情報の発信者と閲覧者による双方向のやりとりなどがしにくかったです。
対してWeb2.0はフェイスブックとかツイッターなど双方向のコミュニケーションが流動的にでき、UIもダイナミックに変わるようになった時代です。例えば、他のユーザーの投稿に「いいね!」したりコメントしたりすることができ、それがすぐページに反映されるようになりました。
そして、Web3はブロックチェーンが可能にした非中央集権型・権力分散型の生態系で、個人に権益やオーナーシップを与えるものです。これはまったく新しいインターネットの時代です。
Web2.0時代には、ITの大企業が個人情報を利用して得た莫大な利益をユーザーに十分に配分しなかったという見方があります。ソーシャルメディアの会社が批判に晒(さら)されているニュースを見聞きした人もいるかもしれません。
現在のWeb3の技術を活用したアプリを使えば、ブロックチェーン上でユーザー同士が直接取り引きするため、Web2.0のように大企業が個人情報を自社データベースに吸い取って自社のために独占的に使うことがあまりできません。
Web3では主にユーザーが利益を得るという点は、革命的というか抜本的な変化です。(中略)「個人が主権を持ち、エンパワーされる」時代と表現してもよいかもしれません。
ただ、Web2.0のやり方もインターネット生態系において重要な役割を果たしているので、Web2.0とWeb3は長く共存するでしょう。Web2.0企業として始まり、Web3に進出した会社も多々あります。
パシフィックリーグマーケティング株式会社
テクノロジーアドバイザー
1981年、大阪府生まれ。東京大学大学院で修士号取得後、三菱東京UFJ 銀行(現・三菱UFJ 銀行)米州本部に就職。 その後、ハーバード大学大学院で理学修士号を取得。卒業後にグーグル株式会社(Google Japan)に入社。大企業の幹部に対し、テクノロジーを活用したビジネスモデル変革等のデジタルトランスフォーメーションを支援する。現在はベンチャー投資家として活躍。日本企業やコーポレートベンチャーキャピタルへの助言なども行う。京都大学経営管理大学院客員教授。プロ野球のパ・リーグをデジタル技術等で支援するパシフィックリーグマーケティング株式会社にて、テクノロジーアドバイザー。著書に『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』(講談社現代新書)、『2025年を制覇する破壊的企業』(SB新書)など多数。
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データサイエンティスト
シリコンバレー育ちの台湾系アメリカ人。1984年、アメリカ生まれ。米スタンフォード大学工学部経営工学科卒業。在学中に日本留学を経験し、日本に魅了される。卒業後は、バークレイズ・キャピタル証券(現・バークレイズ証券)に就職し、東京勤務。その後、中国・北京にて証券自己勘定取引会社を設立・経営。会社売却後、米ペンシルバニア大学ウォートン・スクールにてMBAを取得。グーグル合同会社(Google Japan)、スーパーセル(東京支社で勤務したのち、本社ヘルシンキで勤務)、スマートニュースなどで勤務(主に機械学習やデータ分析)。東京を拠点に、キャリアを形成中。
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