パーソナルトレーニングジムR社におけるSTP分析
パーソナルトレーニングジムのR社のケースを用いて、STP分析を行います。
同社のパーソナルトレーニングビジネスは、2012年にS社長が自身の体験をもとに、現在の企業理念である「人は変われる」を証明するためスタートした事業です。当初、知名度も実績もない状況でしたが、有名人を起用し「結果にコミット」というキャッチフレーズとともにビフォー・アフターの体型をセンセーショナルに見せたCMを流したことで、一気に会員数を増やしていきました。開始3年目で売上100億円を突破し、その後、他事業へと多角化を進めたことで2019年度の連結売上高は2000億円に達するまで急成長を遂げてきました。
R社の事業は一見、富裕層に対する高額のフィジカルトレーニングビジネスととらえがちですが、実際のターゲットとポジショニングは全く違います。事実、当初彼らも富裕層に的を絞ってマーケティングを行いましたが、期待した結果が得られず、すぐに広く一般人を対象にしたCM広告に切り替えています。
多くの人は「やせたい」「かっこいい体型になりたい」と思う気持ちはあってもそれを継続する強い意志が持てず、いわゆる「三日坊主」で終わってしまい、諦めモードになっています。「結果にコミット」という力強いメッセージとともに、高額とはいえ返金制度も用意することで安心感と信頼感を高め、「三日坊主」セグメントに所属する多くの人々の心をつかんだわけです。これをSTPのポジショニングマップに描くと下の図表3のようになります。
したがって、R社の競合会社は従来のフィットネスクラブやトレーニングジムではありません。R社は「三日坊主セグメント」の人々に対して、目標達成をコミットするコーチング事業を開発したのです。それゆえ、彼らはトレーニングジムとは全く関係ない英会話、ゴルフ、料理教室といった事業へ、「人は変われる」「結果にコミット」という同様のコンセプトのもとで進出することができたのです。
木下 雄介
カッティング・エッジ株式会社 代表取締役
中小企業診断士
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