(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

ハンセン指数19,362.25 pt (2.69%)
中国本土株指数6,628.14 pt (2.98%)
レッドチップ指数3,697.51 pt (2.49%)
売買代金992億8百万HK$(前日800億2万HK$)

取引時間中に発表された8月CPI低下を受けて大幅反発

来週の中秋節連休を前に香港ハンセン指数は7日ぶりの大幅反発となった。同指数は節目の19,000ptを回復し構成する73銘柄すべてが上昇する場面もみられた。前日まで終値ベースで実に約6ヵ月ぶりの安値を4日連続で更新し、6営業日で1,000pt近く下げていたことから指数は一本調子で上げ幅を拡大した。

 

取引時間中に公表された中国の8月の消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)が市場予想に反して低下したことや、足元の景気動向を受けて当局の追加の景気刺激対策の期待が根強いものとなった。

 

また中国政府は、国務院が8月末に新たに発表した一連の政策措置の詳細を9月上旬に公表すると表明しており、景気テコ入れ策に対する期待感も強まっている。

 

人民元安の一服も相場を支えた。中国人民銀行は9日、人民元の中心レートを13日連続で市場予想より元高方向に設定、1ドル=6.9098元とした。現値水準の6.93元/ドルからやや離れているも、急ピッチな元安は落ち着きをみせ始めている。今週、人民元は2020年8月以来、約2年ぶりの安値水準を記録していた。

当局や人民銀行の相次ぐ支援発表で不動産株は改善傾向

9日の香港市場は本土不動産株が大幅高。不動産株で構成されるハンセン本土不動産指数は6.3%高と指数を押し上げた。

 

不動産開発大手の碧桂園(2007)は10%を超える大幅高、不動産管理サービスの碧桂園服務(6098)、不動産開発の龍湖集團(0960)、政府系デベロッパーの華潤置地(1109)は大幅高となった。

 

中国の不動産株についてはここ数日、ボラティリティの高い相場が続くも当局や人民銀行が相次ぐ不動産危機を回避するための支援を発表しており、投資家心理はやや改善傾向にあるようにみられる。

 

ハンセン本土不動産株指数は年初から約40%近く下落したが、ここ数日は約1ヵ月半ぶりの高値まで回復した。先月は人民銀行が不動産開発会社の資金不足で建設が止まっている住宅プロジェクトについて、買い手に引き渡しを確保するために特別融資を提供するなど、中国政府はこれまでに打ち出した財政支援策としては最大規模に匹敵する対策を講じている。

 

不動産デベロッパーの資金繰りの悪化で建設工事が停止した開発プロジェクトについては、河南省鄭州市が中断している市内全ての住宅開発プロジェクトを10月6日までに再開させると宣言し、不動産開発業者が完成物件を確実に引き渡すようにすると表明した。

 

来月、5年に1度の共産党大会が北京で開催されるだけに、やはり経済や社会の混乱は回避しておきたいというのが共産党首脳部の本音というわけである。今回の動きは他の都市も追随する可能性があり、不動産市場への信頼の回復につながる可能性も示唆され、引き続き更なる支援策が打ち出されるか内容を見極めたい。

 

中国本土株は上海総合指数が前日比0.83%高、景気テコ入れ策に対する期待感が強まる流れも午後は上値が重い展開となった。

 

週末の中秋節連休を前に取引が手控えられたほか、当局は新型コロナウイルス感染拡大防止のため不要不急の移動を控えるよう、住民に呼びかける防疫対策を強化する方針を表明した。

 

南西部の成都では先週1日から開始したロックダウンの延長を決定するなど、感染拡大リスクがあるとして慎重な対応が続く。連休明けの動向を探る展開となった。

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