評価システムによりソフトウェアの信頼性担保が可能に
山本 新しいものは必ず少数派から始まります。日本の人々も新しいテクノロジーはそういうものだと、リスクを過剰に感じるのではなく、耐性をつけていきたいところですね。
教育については日本のように文系理系と分けること自体がナンセンスで、すべての人がテクノロジーを使いこなすための教育が必要だと思います。規制について政府がすぐに対応しないのであれば、個人で国外に出ても新しいテクノロジーをどう取り入れていくのかを考えていくようなことも必要になるでしょう。
ジェリー 多くの人が行動すると運動になっていきます。ビットコインから始まった新しい金融システムは、国境を越えたバーチャル空間で自由に開発も利用もされています。
イーサリアムのアプリを作るのに誰の許可も必要ありません。アップルのApp StoreやGoogle Playストアの審査のような手続きもなく、売り上げのコミッション(手数料)を取られることもなく、アプリを自由に出すことができるのです。
山本 プラットフォーマーの許可や審査なくアプリを出すことができるのは革新的です。ただ、あえて問題点を挙げるとすると、悪意のあるものであっても出せてしまうことですね。
ジェリー アプリの開放は誰も妨害できないので、その点は問題ですね。しかし、解決策もあります。
詐欺のプロジェクトが作られたら、コミュニティが調べて「このチームは胡散臭い」とか「スマートコントラクトコード(アプリのコード)にセキュリティリスクがある」とか「開発者が悪意を持ったらお金を握られてしまう仕組みを使っている」とか指摘していきます。
専門的にブロックチェーンアプリのコードチェックをしている会社もたくさんあります(誰でもそのコードを確認できるのは、従来の金融システムと対照的であり、大きなメリットです)。
それらが真っ当な指摘であれば、それが広がって詐欺プロジェクトに投資しないようにしようという流れになっていくこともあります。
例えば「RugDoc IO」(https://rugdoc.io)ではそういう調査結果や、安全に利用する方法の教育資料が載っています。日本語のコミュニティですと、イールドファーミングラボ(Yield Farming Lab)というDiscord(チャットアプリ)コミュニティが活発です。
DeFiをやっている人はウォレットアドレス(*4)やツイッターアカウントがあるので、「このウォレットの人が言ったなら信頼できる」とか「過去何年もいろんなDeFiをやってきた人が言うなら」と、過去の評価の蓄積から匿名でも信頼できるということがあります。
山本 そうした評価システムができあがっているのはいいですね。
*4 ブロックチェーン上でのウォレット(財布)のアドレス(住所)。例えば、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリンのアドレスは0xAb5801a7D398351b8bE11C439e05C5B3259aeC9Bで、その資産や取引明細はhttps://etherscan.io/address/0xab5801a7d398351b8be11c439e05c5b3259aec9bで見ることができます。もちろん、ウォレット所有者が匿名や偽名で活動することも多いです。
山本 康正
パシフィックリーグマーケティング株式会社 テクノロジーアドバイザー
ジェリー・チー
データサイエンティスト