2022年7月分鉱工業生産指数・速報値について (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

部品供給不足の影響緩和等を受けて生産は2ヵ月連続して前月比上昇に

 

出荷指数も2ヵ月連続前月比上昇。基調判断「生産は一進一退」据え置き

 

7月分景気動向指数・一致CIによる景気判断は6ヵ月連続「改善」か

 

 

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・7月分速報値・前月比は、部品供給不足の影響が緩和したことなどから自動車工業等が上昇し、全体で+1.0%と2ヵ月連続上昇した。季節調整値の水準は97.1で、21年7月の98.1以来の水準だ。前年同月比は▲1.8%で5ヵ月連続の低下である。

 

●7月分鉱工業生産指数では、全体15業種のうち自動車工業など6業種が前月比上昇、需要の減少などで電子部品・デバイス工業など8業種が前月比低下、パルプ・紙・紙加工品工業1業種が横這いであった。

 

●経済産業省の基調判断は21年11月分から22年3月分まで、「生産は持ち直しの動きがみられる」になっていたが、22年4月分で「生産は足踏みをしている」に下方修正され、5月分では「生産は弱含んでいる」に連続して下方修正されていた。前回6月分では、「生産は一進一退で推移している」に上方修正され、今回7月分でも、「生産は一進一退で推移している」の判断は継続となった。

 

●製造工業予測指数7月分は前月比+3.8%の上昇であった。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値では、7月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲0.9%低下の見込みであった。90%の確率に収まる範囲は▲3.1%~+1.3%になっていた。実際には、鉱工業生産指数の前月比が+1.0%の上昇になったが、これは製造工業予測指数を2.8ポイント下回る上昇率で、試算値最頻値を1.9ポイント上回った。

 

●7月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+1.6%と2ヵ月連続の上昇になった。前年同月比は▲1.6%と7ヵ月連続の低下になった。

 

●7月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比0.0%になった。前年同月比は+4.5%と11ヵ月連続の上昇となった。

 

●7月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+1.6%と2ヵ月ぶりの上昇になった。前年同月比は+8.2%と11ヵ月連続の上昇となった。

 

●鉱工業全体の在庫循環の動きをチェックするために、縦軸に鉱工業在庫指数・前年比、横軸に鉱工業出荷指数・前年比をとった在庫サイクル図をつくると、20年10~12月期、21年1~3月期では「意図せざる在庫減局面」に、4~6月期、7~9月期では「在庫積み増し局面」だった。10~12月分では在庫が前年同期比+4.9%、出荷が前年同月比0.0%の伸び率になり、「在庫積み上がり局面」となった。22年1~3月期では在庫が前年同期比+6.8%、出荷が前年同期比▲1.8%の伸び率で引き続き「在庫積み上がり局面」継続。4~6月期も、在庫が前年同月比+4.2%、出荷が前年同月比▲3.6%で、「在庫積み上がり局面」継続となった。今回7月分・速報値でも、在庫が前年同月比+4.5%、出荷が前年同月比▲1.6%で、「在庫積み上がり局面」継続となった。

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると8月分は前月比+5.5%の上昇、9月分は前月比+0.8%上昇の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、8月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲0.6%の低下になる見込みである。90%の確率に収まる範囲は▲2.9%~+1.7%になっている。

 

●先行きの鉱工業生産指数、8月分に先行き試算値最頻値前月比(▲0.6%)で延長し、9月分を製造工業予測指数前月比(+0.8%)で延長すると、7~9月期の前期比は+5.4%の上昇になる。また、8月分・9月分を製造工業予測指数前月比(+5.5%、+0.8%)で延長すると、7~9月期の前期比は+8.4%の上昇になる。生産指数は、4~6月期が前期比低下になったが、7~9月期は前期比上昇に戻る可能性が大きそうだ。

 

(アニマルスピリッツ指標)

●経済産業省は製造工業生産予測指数からアニマルスピリッツ指標を作成している。21年6月調査結果で、アニマルスピリッツ指標(生産活動マインド指標:DI)は10ヵ月連続のプラスの数値となり、企業の生産マインドは強気超の状況が続いていたが、21年7月~22年8月調査結果ではDIは14ヵ月連続のマイナスになっている。22年8月調査結果のDIは▲13.8である。22年7月調査結果のDI▲8.5からマイナス幅が拡大した。

 

 

(7月分の景気動向指数・速報値予測)

●7月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.6程度の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、新設住宅着工床面積、マネーストック、東証株価指数の5系列が前月差寄与度プラスになり、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、消費者態度指数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差寄与度マイナスになるとみた。

 

●7月分の一致CIは前月差+1.5程度の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率、輸出数量指数の7系列が前月差寄与度プラスに、商業販売額指数・卸売業1系列が前月差寄与度マイナスになるとみた。

 

●7月分で景気の基調判断は、6ヵ月連続して、景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」になると予測する。予測通りだと前月差と3ヵ月後方移動平均・前月差がともに上昇になる。このため、再び「足踏み」に下方修正になるための「3ヵ月後方移動平均の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1ヵ月、2ヵ月または3ヵ月の累積)が1標準偏差以上、かつ当月の前月差の符号がマイナス」という条件は満たさないとみられる。

 

●7月分の先行DIは38.9%程度と景気判断の分岐点である50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、新規求人数、日経商品指数、東証株価指数の3系列がプラス符号に、マネーストック1系列が保合い、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列がマイナス符号になるとみた。

 

●7月分の一致DIは62.5%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率、輸出数量指数の5系列がプラス符号に、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の3系列がマイナス符号になるとみた。

 

(2022年8月31日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年7月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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    三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

    旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
    パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
    著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

    著者紹介

    連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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