(※写真はイメージです/PIXTA)

早稲田大学名誉教授・浅川基男氏の著書『日本のものづくりはもう勝てないのか!?』より一部を抜粋・再編集し、各国と比べた日本の現状について見ていきます。

教科書にも顕著な差…日本の「人材教育」への危機感

本業の勉学意欲喪失の傾向は教科書にも表れている。米国ではノーベル賞級の学者が理科の教科書を作ることもあり、一冊100$以上の価格が一般的である。したがって日本の教科書(高校生物)の厚さ・大きさには世界との大きな差が生じている。[図2]の写真に「機械材料学」の筆者執筆の教科書と米国の教科書を比較して示す。

 

[図2]機械材料学の日米教科書の比較

 

米国で使用されている大学初学年の「機械材料」の教科書は多色刷りB5版相当で1000頁前後、価格は1万円を超える。一方、日本の大学教科書はさらに小さいモノクロA5版200頁、3000円以内が多数を占めている。

 

出版会社は「今の大学生は3000円を超えた教科書は買わない。欧米のようなカラー刷りの良心的な教科書を作りたい気持ちはあるが、学生だけでなく教授からも相手にされない」と嘆いていた。

 

ものづくり教育を語る前に、人材教育で大変気になることがある。

 

戦後、大多数の国民は貧しかったため、有為な人材は、その経済環境を問わず国や地方が救い、等しく教育を施す努力がなされてきた。

 

しかし、現在は進学・教育を受ける機会そのものが固定化しはじめている。東京都各区の大卒人口率と公立小学校5年生算数の平均正答率の関係は、親の大卒人口率が高いほど、平均的学力が高い相関(相関係数0.91)となっている。

 

教育の機会均等が崩れつつあり、日本社会のシステムがますます硬直化してきている。学生も授業料は親丸抱えのため、高額授業料の痛みを感じる機会もない。

 

 

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浅川 基男


1943年9月 東京生まれ
1962年3月 都立小石川高校卒業
1968年3月 早稲田大学理工学研究科機械工学専攻修了
1968年4月 住友金属工業株式会社入社
1980年5月 工学博士
1981年5月 大河内記念技術賞
1996年4月 早稲田大学理工学部機械工学科教授
2000年4月 慶應義塾大学機械工学科非常勤講師
2002年4月 米国リーハイ大学・独アーヘン工科大学訪問研究員
2003年5月 日本塑性加工学会 フェロー
2004年5月 日本機械学会 フェロー
2014年3月 早稲田大学退職、名誉教授
著書:基礎機械材料(コロナ社)ほか

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『日本のものづくりはもう勝てないのか!?』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。
※「障害」を医学用語としてとらえ、漢字表記としています。

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