Q1. 緑内障は失明しますか?
⇒A. しっかりと治療していれば失明することはまずありません。
緑内障は失明する病気。そう思っている人が多くいます。「緑内障は40歳以上の約20人に1人がかかる日本の中途失明原因1位の病気(*1)」。医師からもそうした説明を受けているかもしれません。失明の不安に毎日おびえている患者さんもいます。悲しいことです。でも事実を知ってほしいのです。きちんと治療を受けていれば99%失明しません。
研究論文でも「20年間で両眼を失明する人は1.4%しかいない(*2)」ことがわかっています。多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれかもしれませんが、99%の人は20年間失明せずに生活できています。しかもこの論文は2015年の発表で20年以上前に治療を始めた人のデータです。つまり、この研究が始まったのは1990年代のこと。携帯電話がようやく普及し始めたころで、もちろんスマートフォンなんてありません。「ノストラダムスの大予言」がまだ信じられていた、そんな時代のことです。
21世紀の今、治療成績はもっと上がっています。目薬・手術などをはじめとしたあらゆる治療が大きく進歩しています。私の勤める病院の外来でもほとんどの患者さんが光を失わずに生活を続けています。
では、なぜ医師は「失明する」というのでしょうか? それは患者さんに真剣に治療に取り組んでもらうためです。世の中はあなたのように本稿を読んで治療に向き合うまじめな人ばかりではありません。そうなると、厳しくいうほうが治療効果は上がりやすい。その一方で、まじめなあなたは不安が募り、人生を楽しく過ごしにくくなってしまうことでしょう。
だからこそ、あなたには「きちんと治療すれば失明はまずない」と思って安心して治療を受けてほしいのです。治療するのは失明を防ぐためですが、それは「あなたの人生をよくする」ためでもあるのです。あなたは不安に思う必要はありません。失明におびえながら生きることが人生をよくするとは思えません。もちろん不安はあるでしょう。でも、本書の内容を実践していけば大丈夫です。
私が勤める病院には日本だけでなく、海外からも症状の進行した緑内障患者さんが多くいらっしゃいます。たとえ進行していたとしてもきちんと治療すれば、失明を防ぐことは不可能ではありません。
一般的な緑内障であれば、日常生活が立ちゆかなくなるケースはまれです。大切なのは「きちんと治療する」ことです(ただし、治療開始時に重症な場合や特殊なケースはのぞく)。では、きちんと緑内障を治療するにはどうすればいいのか? まずは緑内障についてしっかりと見ていきましょう。