Q1. 緑内障になったらどのように進行しますか?
⇒A. 初期から中期には自覚症状がありません。後期になると急に視野が狭くなったように感じます。
緑内障は視神経がダメージを受けて視野が徐々に狭くなっていく病気です。視神経は約120万本あるといわれ、少しぐらい傷んでも視野欠損は起こりません。視野欠損は周辺から起こることが多く、10〜20年かけてゆっくりとしたペースで進んでいきます。視野が欠けるというと、真っ暗になることや白くぼやけることをイメージするかもしれませんが、症状が進まない限り、視野欠損を自覚することはできません。
視野が欠け始める初期では視力は良好で視野の欠けは実感できません。また視野が半分程度欠けた中期でも視力は良好で自覚症状はほとんどありません。いよいよ後期になると視力が極端に悪くなり、視野欠損も自覚するようになります(図表1)。この段階で治療を始めるとかなり治療に苦慮してしまいますし、日常生活の不自由さも感じます。できる限り中期までには治療を始めたいところです。
通常の緑内障で初期、中期であれば治療をしっかりして、生活上の注意点に気をつけてさえいれば、日常生活に不自由しない視野を維持して一生を過ごせることがほとんどです。とはいえ、「治療が不十分」「進行が早い(特殊な場合)」「発見が遅かった」場合などは視野が狭くなっていきます。緑内障が進行した患者さんは「日に日に見えなくなってきた」「急に進んだ」といいます。
とはいえ、実際には進行が早くなっているわけではありません。たとえば、100%の視野が1%欠けると99%の視野が残っていることになりますが、緑内障の後期で10%の視野しか残っていない人が1%の視野を失うと、同じ進行度でも10倍悪くなったように感じるわけです。さらにいうと、初期のころは周辺の視野や鼻側の視野が欠けていくのに対し、後期になると中心の視野が欠けていくので10倍ではきかないほど進行が早く感じるのです。
外来でも、進行がかなりゆるやかになっているのに「どんどん悪くなっているのでないか」と焦る患者さんとお話しすることがあります。不安が大きいとは思いますが、そういったときこそ落ち着いてしっかりと治療していくことが大切です。
また治療方針として、患者さんのQOL(生活の質)を維持するために自覚症状がないうちに「目薬を増やす」「手術やレーザー治療を検討する」こともあります。とはいえ、ここに難しい問題があります。「見えにくい」と感じていない患者さんに目薬を増やすと目薬の副作用などで「調子が悪くなった」といわれることがあります。また手術やレーザー治療の副作用でも「見えにくくなった」と患者さんが不満を抱くこともあります。こうした背景から治療に二の足を踏んでしまう医師もいます。一方、患者さん自身も積極的な治療を避けてしまう傾向があります。
だからこそ、病気をよく知ってお互いにコミュニケーションをとらないと治療が不十分になってしまいます。では、病気をよく知るために緑内障の種類について見ていきましょう。