日本の待機児童問題が叫ばれるようになって久しいですが、厚生労働省の調査によると近年待機児童は減少傾向にあります。解決の一途をたどっていると言い切れるのか検証していきましょう。

数年で待機児童数が約5分の1にまで減少した理由

それでは、どのような要因で日本の待機児童数は減少に転じたのでしょうか。下記の、各自治体に対して実施された「待機児童数が減少した要因」についてのアンケート結果のデータ【図表2】をご覧ください。

 

【図表2】待機児童数が減少した要因(厚生労働省)

 

備考) 令和3年の待機児童が前年(令和2年)から10人以上減少した自治体に対してその要因を尋ねた結果

 

もっとも多い回答は「受け皿の拡大(新規開設、増改築、利用定員・受入児童数の拡大等)」で87.6%を占めています。着実に受け皿の補填をが遂行されたということが分かります。

 

次に多かった回答は「申込者数が想定ほど増えなかった、または想定以上に減少した」です。それではなぜ申込者数が想定以下に留まったのでしょうか。

 

先ほどの【図表1】に戻っていただくと、2020(令和2)年の12,439人から、 2021(令和3)年の5,634人まで6,805人と大幅に減少していることが分かります。約55%も減少しており、調査期間のなかでもっとも高い減少率を誇ります。ここにヒントが隠されていそうです。下記の、「申込者数が想定ほど増えなかった、または想定以上に減少した理由」についてのアンケート結果のデータ【図表3】をご覧ください。

 

【図表3】申込者数が想定ほど増えなかった、または想定以上に減少した理由(厚生労働省)

 

備考) 左のグラフにおいて「申込者数が想定ほど増えなかった、または想定以上に減少した」を選択した自治体に尋ねた結果

 

もっとも多い回答は「コロナ感染を懸念して利用を控える保護者の増加」で74.0%を占めています。新型コロナウィルス感染拡大に対する懸念から、密閉・密集・密着の3密を避けた結果のようです。

 

次に多かった回答は「育児休業を予定より長く取得する保護者の増加」で57.1%にまで昇ります。これに関しては様々な要因が想定されます。保育園入園を見込んで育児休業をの期間を見込み、入園不可となれば八方塞がりとなりかねないため、あらかじめ待機児童となる想定のもと長めに取得している場合。

 

また、同じく厚生労働省による「令和2年度雇用均等基本調査」において、男性の育児休業取得者の割合が7.48%から12.65%と、1年で約5%増加しているというデータから、ジェンダーにかかわらず育休を取得しようという流れが見て取れます。

 

さらに、株式会社ナリス化粧品による調査によると、配偶者・パートナーが出産した際に育児休暇を取得した人の満足度に関して「とてもよかった」と回答した人の育児休暇取得期間は、1ヵ月以上2ヵ月未満が82.8%。3ヵ月以上取得した人が81.0%です。ともに8割以上を超えており、取得期間が長い人は満足度も高い傾向にあることが分かります。

 

まだまだ実感は湧かない人が多いかもしれませんが、これらのデータから「育児休暇をジェンダーに関係なく取得する傾向」「育児休暇を最小限にとどめたいと考えない傾向」が生まれていると考えられます。そのことが育児休業を予定より長く取得する保護者の数値に寄与しているといえます。

待機児童数にカウントされないケースも

待機児童数のカウントの仕方にも留意しなければなりません。現行のカウント方法は、認可保育施設に申し込んだ児童が第一希望の認可に入れなくても、認可外の施設に入園している場合、待機児童にはカウントされません。

 

また、エリア外の認可・認可外園等を勧められて辞退すると「特定の保育所等を希望している児童」に分類され、これもカウントされません。一概に「待機児童問題は解決に向かっている」と考えるには早計です。

 

「家族」「仕事」は多くの現代人にとって、人生を形づくるうえでかけがえのないピースです。誰しもが描いた人生設計を叶えることができる社会の実現を願ってやみません。

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